文京区プロジェクトが次のステージへ ~ empublicメルマガ「根津の街から」2017年3月31日

empublicメールマガジン「根津の街から」    (2017年3月31日発行)

桜が咲き始めていますが、まだまだ寒いですね。
ゆっくり咲く桜を楽しみながら、時間の流れをゆっくりと味わえたらいいなと思います。

エンパブリックは4年間の文京区との協働事業が終了し、次のステージに向かいます。
ご協力、ご支援いただいたみなさま、本当にありがとうございました!

 

<INDEX>

1.コラム「仕事づくりはつながりづくり、地域づくり 」(広石)

2.<参加型の地域づくり、地方創生の現場へ!>
つながりから、新しい仕事を生み出す場づくりの技術
鶴岡ナリワイプロジェクト・フィールドワークを開催します!

3.春です! 新しい可能性を拓く学びを!

*ゼミ「問いかけ力を磨こう~ 本質を探り、変化を生む場をつくるために」
4月20日(木)~ 木曜夜コース スタート

*対話「2025年の自分と仕事を考えよう」 4月16日(日)

*実践を通して学ぶ! 育休・復職後の働き方・キャリアを考える場のつくり方
4/22-23 2日間講座+実践支援

 4.編集後記

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◆1◆ コラム「仕事づくりはつながりづくり、地域づくり 」(広石)

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エンパブリックが文京区と取り組んできた「文京ソーシャルイノベーション・プラットホーム」は3月末で終了します。
4年間で3800人以上の方が参加いただき、67のプロジェクトが生まれ、現在も継続しています。

思い起こすのは、この事業が始まる時に、「企画はいいが、本当に参加者はいるのだろうか?」という声が区役所の中からあったことです。

自分の身近な地域に関わりたい、何か役立つことを始めたいという思いのある人は、たくさんいました。
67のプロジェクトは、私たちが引き出したというよりも、地域に眠っていた可能性が、今回の事業をきっかけに芽吹いたのだと思います。

この4年間、対話で聞かれたのが「地域への入口がわからない」ということでした。
4年間の対話や講座などに参加した人たちが探していたのは、自分を活かしながら、自分のペースで地域と関わり、仲間を増やすにはどうしたらいいのか?ということでした。

その鍵となるが、対話と仕事づくりだと私たちは考えてきました。

自分の関心あるテーマの対話に参加し、そこで地域の人に出会い、何が起きているのか、どんな可能性があるのか話を聴く中で、自分の求めていること、できることに気づく。
それが地域の入り口になると思います。

今年の文京ミライ・カフェでは、1年間で42人の地域での活動実践者の方にストーリートークをしていただきました。
「区内に何十年も住んでいるのに、初めて知った」「身近な活動の存在に驚いた」という声を多数お聞きして、うれしく思っていました。

そして、「仕事づくり」の鍵となるのも、地域の人たちとの出会いでした。
自分の考えを伝え、共感する人が現れ、語り合うことで相互に刺激し、助け合っていける仲間ができます。
仲間がいることで、一人の時には見えていなかった考え方や地域の資源、顧客のニーズへの理解が深まり、本当に必要とされていることが見えてくる。

そのしっかりした基盤があることが、地域での起業の大きな力になっていました。

「仕事をつくる」というと利益などの経済的側面が強調されますが、
仕事をつくる中で、地域にある課題が明確になり、同時に解決策のアイデアも生まれていきます。
仕事をつくる中で、地域の人や資源の可能性に気付くことができます。
仕事をつくる中で、それまでなかったつながりが生まれ、
仕事をつくるプロセスに参画することで、人は新しい役割を自分に得て、自分の可能性に気づきます。

仕事づくりは、地域や人の中にある可能性をカタチにしていくプロセスであり、
仕事づくりはつながりづくり、地域づくりだと自信を持って言えるのは、文京区で思いをもつ多数の方たちと出会い、ともに試行錯誤しながら動いてきたからです。

区の事業としては終わりますが、エンパブリックは一区民、一民間事業者として、携わっていきます。

また、4年間のプログラムに参加してきた区民のみなさんが協力して、「文京マチコト」というソーシャルネットワークを立ち上げました。
https://empublic.jp/bunkyomachikoto

区の事業が市民の手で運営されるように展開していけたらいいなと思っています。

 

また、新年度の4/5には、文京区千石地域で、子育て世帯の人たちが中心に地域の人たちが協力し合って、0才から120才まで、みんなの「やってみたい!」が表現できて、いっしょに夢をかなえる「夢のシェア」ハウス「千石たまご荘」が始まり、キックオフ・イベントとして広石が講演します。(夜の部はもう定員超えだそうです。昼の部の参加者を募集しています。エンパブリックのサイトをご覧ください)

地域の活動は、そこに住む人たちが自ら動き、自らつくり出していくことが基本です。
その大切さ、可能性に改めて気づける、ちょうどいい機会となったと思います。

ここから、また、みなさんと新しく歩んでいきたいと思います。

ご参加、ご協力、関心を寄せてくださったみなさま、ありがとうございました。

これからも、よろしくお願いいたします。

 

◆2◆ つながりから、新しい仕事を生み出す場づくりの技術
鶴岡ナリワイプロジェクト・フィールドワークを開催します!

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対話を通して、地域の人たちの中に眠っている可能性から「新しい仕事」がどんどん生まれるコミュニティを。どう作っていけばいいか?

そのチャレンジを、山形県鶴岡市で実践し、2年間で30を超えるナリワイ起業家を生み出した「鶴岡ナリワイプロジェクト」の現場に訪問し、動き出した人たちとの出会いと対話、理論的裏打ちとなる講義を通して、実践できる方法論を学ぶプログラムを行います。

地域の女性たちが中心になって「自分の好きなこと × 地域の人に役立つこと」で、月3万円売り上げる自分のナリワイを生み出すこと。

その呼びかけから始まったプロジェクトから2年間で30人のナリワイ起業家が動き出しました。

このプロジェクトは、月3万円稼ぐことがゴールではありません。
家族の仕事+自分のナリワイという新しいライフスタイルを広げること、
月数万円のビジネスを複数組み合わせた自由な仕事の生き方を生み出すこと、
月3万円でつかんだコツを活かし本格的なビジネスへと発展させること、
UIターンしてきた人が自分の好きや得意を捨てずに生きていけること。

そんな自分らしい主体的な生き方を自らつくりだせるようになることこそがゴールです。

地域での仕事づくりは、お金だけでなく、社会的な意味、ライフスタイルとの結びつきなど多面的な意味と可能性を持っています。

このような仕事づくりのノウハウを、鶴岡の現場で起業した人や場づくりの担い手たちと出会い、話し合う体験と、地域に根付いた仕事づくりの理論的な支援の両面から学ぶことで、実践できる技術を習得するフィールドワークを開催します。

開催日 2017年5月13日(土)9:30~18:00、14日(日)9:30~15:00

開催場所 山形県鶴岡市内(参加者にご連絡します)

参加費 2日間セット 24,000円 (プログラム実施費・資料費込み、鶴岡までの交通費、現地での宿泊費、食費別)

詳細・申込 https://empublic.jp/6903

 

 ◆3◆ 春です! 新しい可能性を拓く学びを!

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■ ゼミ「問いかけ力を磨こう~ 本質を探り、変化を生む場をつくるために」

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情報があふれ、多様な選択肢がある時代に求められるのは、「問いかける力」。
6つの切り口から仕事の様々な場面で出会う問題に対して、適切に問いを設定し、関係者と共有する力とは何か、ともに考えましょう。

*4月スタート木曜夜コース 4月20日(木)19時~ 全6回

*詳細・申し込みはこちらから  https://empublic.jp/questioning

 

■ 対話「2025年の自分と仕事を考えよう」

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これからの経済社会の変化において、私たちの仕事はどう変わっていくのか。
情報誌「readiness for 2025」で紹介している変化を考える対話プログラムを体験し、  自分たちで実施する際の対話のポイントを学びます。

開催日 4月16日(日) 13:00~17:30

詳細・申し込み https://empublic.jp/6370

 

■実践を通して学ぶ! 育休・復職後の働き方・キャリアを考える場のつくり方

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復職後の女性のための「育休後カフェ」に取り組んできた山口理栄さんとのコラボで 産休・育休・復職に関する対話やワークショップの企画・準備・運営を、 講義と実践体験を通して学ぶコースを開催します。
実践経験を積み、すぐに活躍できる実力を身につけることを目指します。

2日間の集中講義とワークショップ実践、ふりかえりのセットのコースです。

・4月22日(土)10:00~18:30、 4月23日(日)10:00~17:00

・ワークショップ実践 ・9月9日(土) 10:00~16:00

詳細・申し込みはこちら https://empublic.jp/6836

 

◆4◆ 編集後記

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4年にわたる文京区の新たな公共プロジェクト最後の日に、これまで支援させて頂いた担い手の方々が、サプライズで謝恩会をしてくださいました。とてもうれしくて、本当にこのプロジェクトをやってよかったと思いました。

新たな公共プロジェクトは、エンパブリックにとっても、事実と照らし合わせながら、イノベーターを地域で生み出しサポートする理論とノウハウを確立できたとても貴重な機会でした。12月に開催した成果発表会で、委員の先生が、「新たな公共プロジェクトは行政から始まったが、もはや区民のものとなった」とおっしゃいましたが、まさにその通りです!プロジェクト終了後も自主的な支援ネットワーク「文京マチコト」を立ち上げ、みなさんとともに、地域のためになる「面白いこと」続けていきます。

謝恩会で頂いた感謝状は一生の宝物です。ありがとうございました!

そして、来年度からもがんばりましょう。(矢部)

 

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株式会社エンパブリック メルマガ「根津の街から」

(第165号 2017年3月31日配信)

発行責任者=広石 拓司

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ご意見・ご感想は info@empublic.jp までご連絡ください。

皆さまのご意見・ご感想お待ちしています。

配信停止希望の方はこちらからお手続きをお願いします。

https://empublic.jp/mail_news

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「6種類の資本」 これからのビジネスの“元手”となるものは何か ~2025年のリーダーのための新常識  第8回

資本主義の「資本」とは何なのか、改めて問われるようになっています。
資本というと、お金を最初に思い起こします。
マルクスは資本論において、モノとモノを交換する道具であった貨幣が、お金を使ってモノをつくり販売してお金を増やすように使われた時、資本になったと述べています。それを簡易に描くと、貨幣は「 モノ-  金 - モノ 」、資本は「金 - モノ - 金」となります。お金を増やすために使われるお金が資本という訳です。
事業を始めるには”元手”が必要となり、元手を維持し、増やすことが事業の目的です。
では、元手はお金だけでいいのか?というと、そうではありません。長らく事業には「ヒト、モノ、カネ」が必要だと言われてきました。ここで、ヒトは労働力、モノは資源や工場などのことでした。そうすると、カネがあることで質の高いヒトやモノを集めることができるとされ、「カネ」が最も重要な指針となりました。そこから大きく、良い会社とは、資本金の大きい会社のことを言うようになりました。
しかし、それが大きく変化していきています。
資本金が大きい会社、売上や最高益を出した会社が、2,3年後には転落し、経営危機を迎えるような状況が生じています。資本金や売上も大切ですが、それだけでは良い会社なのか、中長期的に成長する会社なのか、判断が付きにくくなっています。
そこで、組織がどのように長期にわたり価値を創造するかを説明できる必要性が高まり、財務情報だけでなく、非財務情報も併せた「統合報告」を公表する動きが広がっています。
この統合報告では、資本を「組織が価値を生み出す源泉」であり、かつ「価値の蓄積」としています。そして、組織が長期にわたり創造する価値は、資本が増加、減少、又は変換された形で現れると考えています。
例えば、組織が価値を生み出すには、自然の資源を利用する必要があるとします。自社が利用できる自然資源を使い、利益が出たというのは、自然資本が財務資本に転換されたと考えるのです。そうすると、自然資本に対する取り組みがない場合、長期的に見ると自然資本は失われ、それを使った利益を生み出せなくなり、結果的に財務資本も失われてしまうでしょう。
例えば、人材もそうです。財務資本の拡大のみを考え、従業員への研修をしなかったり、過酷な労働が続くと、アイデアを出す人が減り、長期間働く人も減ってくると、人的資本や知的資本が損なわれ、やがて、それは財務資本に影響を与えるでしょう。
世界が日々変化している中で、企業にイノベーションが求められる時代であり、自然環境破壊が深刻になっていく時代には、短期的な利益を追求することで、人や知恵、自然、関係性などを損なってしまうと、長期的に財務的な利益も生まれなくなる。そのことを概念や問題意識としてだけなく、企業がしっかりとガバナンスとマネジメントに組み込むことの大切さを指摘しているのです。
そこで、国際統合報告フレームワークでは「6種類の資本」をあげています。
財務資本 :株式、借入、寄付など
製造資本 :建物、設備など
知的資本 :組織的な、知識ベースの無形資産
  知的財産権、暗黙知、システム、手順及びプロトコルなどの「組織資本」
人的資本 :人々の能力、経験及びイノベーションへの意欲
  組織ガバナンス・フレームワーク、リスク管理アプローチ及び倫理的価値への同調と支持
  戦略を理解・開発し・実践する能力、社員のロイヤリティや意欲、
社会・関係資本 :多様なステークホルダーとの関係、情報を共有する能力
  共有された規範、共通の価値や行動、主要なステークホルダーとの関係性、
  外部のステークホルダーとともに構築し、保持に努める信頼及び対話の意思、
  ブランドや評判に関連する無形資産、組織が事業を営むことの社会的許諾
自然資本 :組織の過去、現在、将来の成功の基礎となる物・サービスを提供する
  全ての再生可能及び再生不可能な環境資源及びプロセス
  空気、水、土地、鉱物及び森林、生物多様性、生態系の健全性
この6種類がどのように増減し、相互に影響しあっているのか、企業は把握し、外部とコミュニケーションしていく必要があるとしています
この6種類がどのように増減し、相互に影響しあっているのか、企業は把握し、外部とコミュニケーションしていく必要があるとしています。
人材開発や働きやすさ、自然保護なども、「社会的責任を果たさないといけない」という消極的な意味ではなく、「自社が中長期的に存続し、発展していくための戦略」として問われるようになっています。
これからますます先が見えにくくなる中で、スタークホルダーからの長期的な信頼を得るために、2020年代に向かって6種類の資本のガバナンスが、とても大切な経営テーマとなっていくでしょう。
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エンパブリックでは、2020年代に向けてサステナビリティを成長戦略として活かしていく事業構想力を講義と対話を通して考えていくプログラム「サステナビリティ&ビジネス」を4月20日から始めます。ぜひご参加ください。詳細はこちらより https://empublic.jp/6759
サンケイビジネスアイ 掲載サイト

【4/5@千石】講座「思いの実現を支えあうコミュニティを 自分たちでつくっちゃおう!」

 

「こんなこと始めたい」「困っている人を助けたい」
「人に役立つ仕事をしたい」・・・ さらに読む

2025年のリーダーのための新常識  第7回 「ソーシャルキャピタル 」 自分に問いかけてみてください。関係性の質が中長期投資を呼び込む

自分に問いかけてみてください。

新しいことを始めようとした時、あなたが困難な状況にある時に、損得を考えずに、手伝ってくれる人、助けてくれる人は、何人くらいいるでしょうか?
もし、たくさんの人の顔が浮かぶなら、あなたは豊かなソーシャルキャピタルを持っていると言えます。
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)という概念が知られるようになった一つのきっかけは、アメリカの政治学者R.D.パットナムの「孤独なボウリング」という書籍です。 パットナムは、アメリカでは1980年から93年の間にボウリングを楽しむ人は10%増加しましたが、クラブに所属してボウリングをする人は40%減少していると気づきました。仲間やグループでなく、一人で行う人が増えたのです。そして、地域のグループ活動の減少は政治参加や地域の豊かさなどにも相関が見らました。つまり、「孤独なボウリング」の情景は、仲間同士の会話や社会的交流の経験が失われ、地域のソーシャルキャピタルが減衰していることの象徴なのです。
そして、ソーシャルキャピタルを「人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を改善できる、信頼、規範、ネットワーク」と考えたのです。
日本では、近年、マラソンなど一人で行うスポーツの人気は高まっていますが、チームスポーツを行う人は減っているようです。場所不足もあるでしょうが、地域のソーシャルキャピタルが弱まっていることも関係しているでしょう。
このようにソーシャルキャピタルの概念は、当初、社会学で広がりましたが、経済や経営にも広がっています。
例えば、異業種交流課に参加し、名刺をたくさん集め、知り合いが増えたとしても、それがなかなかビジネスに結びつくことは少ないようです。必要なのは、営業先候補や自分の情報を伝える相手の情報であり、相手と関係性を培っていこうとしていないからでしょう。名刺交換が主の異業種交流会は、ソーシャルキャピタルを豊かにする機会になっていないのです。
会社について考えてみると、売上額が大きく、知っている人も多いのに、尊敬されていない会社、その会社の姿勢や考え方、社員のファンの少ない会社もあります。
そのような会社は、売上高がよく、成長している間は注目されますが、成長が止まったり、失敗したりすると人は離れていきます。そして、そのような会社は、短期的、利益目的の投資は集まっても、先が見えない時代に中長期的な投資は集まりにくいでしょう。
金銭的な信頼だけでなく、関係性に基づく信頼を、ステークホルダーとどれくらい構築できているかというソーシャルキャピタルは、中長期的な投資の重要な判断材料になってきているのです。
今は、ある年に最高益を出した事業が2、3年後には赤字になるということが頻繁に起きる時代です。今、財務が良くても、それだけでは中長期的な投資を行うことは難しくなっています。
国際的な「統合報告」の動きの中で「社会・関係資本」は「財務資本」と並び、6つの資本の一つとされています。統合報告ガイドラインでは社会・関係資本を、「個々のコミュニティ、ステークホルダー・グループ、その他のネットワーク間又はそれら内部の機関や関係、及び個別的・集合的幸福を高めるために情報を共有する能力」としています。
ステークホルダーと、規範や価値、行動を共有しているのか。組織への信頼を外部のステークホルダーとともに構築し、保持に努めているか。そして、対話の意思があるのか。それが、企業を評価するうえで、財務の結果と同様に大切だと考えられるようになっています。
もし停滞した時があっても、この会社なら可能性があると信頼してくれる人がいるか、新しいことを始める時に成功するかどうかわからなくても、一緒にトライしてくれる人がどれだけいるのか。それが中長期的な成長の基盤となるソーシャルキャピタルです。
経済・社会の変化が激しくなる時代に、中長期的な投資を呼び込む信頼を構築するには、どのようなステークホルダーと、どのように関係し、どのような対話を行っているのかが、ますます大切になるのです。
サンケイビジネスアイの掲載サイト

【寄稿】鶴岡ナリワイプロジェクトが教えてくれること

鶴岡ナリワイプロジェクト報告書への寄稿文

一人ひとりに寄り添うことが、人と街の未来を変える

広石 拓司
株式会社エンパブリック代表

 

鶴岡ナリワイプロジェクトを代表の井東敬子さんが始める時、「鶴岡は自ら動く人はいない」「主婦だからパートしかない」といった声を多く聞いたという。しかし、この2年間で、30人のナリワイ起業家が動き始め、仕事づくりに関する公開講座には年間のべ450人が参加している。事務局も「鶴岡で、こんなに人が来るんだ」と思ったという。

私たちは、地域を見る時、地域性と称して一括りに扱ってしまいがちだ。「この街の住民はまちづくりに熱心な人がいない」と言ったように。しかし、イノベーションの理路では、新しいことに最初に取り組もうとするイノベーター層は全体の2%程度しかいないという。つまり、地域で新しいことを始めようとすると、数十人に一人いる「動き出せる人」を見つけ出すことが大切になる。地域住民を一括りにしていると、可能性の芽となる存在を見落としてしまいがちだ。

一方で、「動き出せる人」は最初から動いている訳ではない。数十人に一人の状況では、同質性が高い地域コミュニティでは、一人だけ違う動きを始めることはリスクが大きい。だから実際に動かないし、口にもしない。口にしても「実現できるの?」と言われたりして、手を引っ込めてしまう。そのように思いがあっても口にしないと、もしかしたら身近に似たことを考えている人がいても存在に気づかない。こうして、思いのある人は孤立していく。

これからの地域づくりに必要なのは、動き出そうという思いのある人が集まる「場」だ。あるべき姿をただ議論するだけ、困り事の要望をいうだけではなく、実際に動ける人が集まり、相互に刺激し、助け合うことで、お互いの背中を押し合える。そんな場が求められている。

鶴岡ナリワイプロジェクトは、主婦の中に「自分の得意なことを活かしたい」という思いを持ち、動き出せる人が集まれる「場」を提供した。地域で動き始めているプロジェクトに参画するという形をとることで、自分だけが浮いた存在とならずに動き出せる環境を整え、その中で、お互いの動きに刺激を受ける場を整えた。そうやって動き出してみると、色々なことに出会ったり、失敗したりする。それを定期的に集まって、ふりかえりを重ねていくことで、一人の時には見えていなかった考え方や地域の資源、顧客のニーズへの理解が深まり、地域の中に自分の活躍できるチャンスを見つけ出すことができる。その結果が、2年間という短い時間で、しかも地域の中でほとんどコストをかけずに、継続的に自分を活かしながら動いていける30人となった。

こうして動き始めたナリワイプロジェクトの参加者たちは「つながりができてよかった」「自分の中にある原石が見つかった」「人生に希望がもてた」と語っている。お金のことも大切だが、それ以上に、地域社会の中での新しい自分の存在意義への手応えを得た人が多い。これは、地域での仕事づくりの持つ社会性を伝えてくれている。

これまでの地域での起業や仕事づくりの議論は「事業規模は?」「いくら稼いだのかのか?」という経済的な議論に陥りがちだった。そして地域活性化も、特産品が売れるなど、経済の数字が活性化の指標になりがちだった。しかし、それは行政や事業者の視点であり、地域に暮らす人にとって大切なのは、「この街で暮らすのが楽しく、生きていくことに希望がある」ではないだろうか。例え、お金があっても、生きる希望がない街から人は去っていき、希望がなく、諦めている人たちだけが残る街に未来はないだろう。逆に、暮らしの充実と希望のある街には人が集まる。ナリワイプロジェクトにはUIターン者も多数集まった。都市暮らしを経験していた人たちは「鶴岡に戻ると居場所がないかと思っていたが、ここがあって良かった」と語っている。経済性だけでなく、話の合う人の存在や自己実現のできる機会がUIターン者には不可欠だ。

もちろん、希望にはお金も必要だ。しかし、金額の多寡以上に、自分の得意が活かされ、自分の問題意識から誰かに役立つことで得られる「自分自身への手応え」こそが、これからの地域社会には大切だ。「自分自身が動けば、何かが生まれ、お金を得られる」という手応えをごく一部のリーダー層だけでなく、多くの人に広げていくプロセスに価値がある。「大して稼げないなら意味はない」と言っていると、手応えを感じる人は増えない。手応えを感じ、動き始める人が増え、動く人に共感する人が増えてこそ、地域に新しい市場が生まれ、それが個々の人の売上高を伸ばすことにもなる。このようなプロセスを踏まず、ただ外部から工場を誘致しても、持続可能な地域にはならないことは既に証明されている。小さく動き始める人がつながり、自分の価値を見出し、地域で希望を持てる人を増やしていくプロセスは手間暇がかかるが、このプロセスなくして地域社会の未来はないだろう。

地域への影響力という点で、まだ鶴岡ナリワイプロジェクトは道半ばと言える。先にあげたイノベーションの理論では、イノベーター層を見て自分も動き出すのはアーリーアダプター層と呼ばれ、それは約13%を占める。イノベーター層とアーリーアダプター層を併せた約15%のあたりにキャズム(大きな溝)があり、それを超えるとメジャー層が動き出し、変化は加速する。今、プロジェクトは、動き始めたイノベーター層、公開講座に参加するアーリーアダプター層に広がってきているが、キャズムを超えるかどうかが、今後の流れを決めるだろう。ただし、ナリワイには希望がある。従来のまちづくりに熱心な層は閉じたコミュニティとなりがちだが、ナリワイは仕事であるがゆえに、顧客=メジャー層に働きかけ続けていくからだ。ナリワイを始めた人を見て、「私にもしてみたい」「できるかも」と思う人が現れ、その人が動き始めることができれば、この取り組みは、地域の、特に女性たちの生き方を大きく変えていくだろう。

そのためには、ナリワイを始めた人が相互刺激しあい、成長していく意欲を持ち続けていける場と、新しい人が始めたいと思った時に動き始める機会にアクセスできる環境が必要だ。この場や機会を継続していけるような仕組みを整え、担い手を増やすことは、残された課題だ。

鶴岡ナリワイプロジェクトが証明したのは、地域には能力やスキルのある人はいるが、手をあげるチャンスと支えあえる仲間に出会えていないがゆえに、その力は潜在化しているということだろう。主婦、高齢者、会社員と一括りにせず、一人ひとりの可能性に寄り添う人がいることで、自分の得意やしたいことを口にする人は増える。その人たちが自ら動いてみて失敗や苦労したことをふりかえって学びにし、お互いの動きから刺激を受け、応援しあえる仲間がいると実感できる「場」があることで、人は可能性を発揮できる。

小さな活動の示す可能性を、どう展開していけるのか。それが地域の実力となっていくのだ。

 

鶴岡ナリワイプロジェクト http://tsuruoka-nariwai.com/

謙虚な問いかけ empublicメルマガ 2017年3月24日号

empublicメールマガジン「根津の街から」    (2017年3月24日発行)

もう年度末になりましたね。 東京の桜も咲き始めているようです。

根津スタジオでは、春からのゼミの参加者を募集中です!
「問いかけ力を磨こう」に加えて、「育休・復職を考える場づくり」「サステナビリティ&ビジネス」という新しいプラグラムも始まります。
次の新しいステージに向かうために、視点を変え、視野を広げるのにご活用ください!

<INDEX>

1.コラム「つながりは謙虚な問いかけから 」(広石)

2.新年度、新しい学びを!

■ ゼミ「問いかけ力を磨こう~ 本質を探り、変化を生む場をつくるために」
全6回 4/20~ 木曜夜コース・スタート! 3月25・26日集中講座

■実践を通して学ぶ! 育休・復職後の働き方・キャリアを考える場のつくり方
全3日+実践 4/22・23+実践+9/9

■ゼミ「サステナビリティ&ビジネス ~SDGS時代の事業構想力を身に着ける」
全5回 4/26(水)スタート!

■ 対話「2025年の自分と仕事を考えよう」 4/16

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◆1◆ コラム「つながりは謙虚な問いかけから 」(広石)

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キャリア・アンカーなど組織・キャリアの心理学で有名なエドガー・シャインに「問いかける技術」という本があります。
原題は「HUMBLE INQUIRY」で、「謙虚な問いかけ」というような意味になります。

そこには、私たちが日頃している「問いかけ」には、4つの側面があると述べています。

・謙虚な問いかけ

・診断的な問いかけ

・対決的な問いかけ

・プロセス指向の問いかけ

 

「診断的な問いかけ」は、物事を見極めよう、理解しようという問いかけ。
「対決的な問いかけ」は、自分の言いたいことを伝えるために問いの形をとるもの。 (例 「本当にそれでいいと思っているのですか?」)
「プロセス指向の問いかけ」は、問いの中身よりも会話の進行に使われる問いかけ。 (例 「次の議題に進んでいいでしょうか?」)

それに対して、「謙虚な問いかけ」は、自分が知らないこと、自分に足りないことを積極的に認め、相手の経験や考えに関心を寄せて問いかけることです。
診断的、対決的、プロセス指向も、謙虚な問いかけの場合も、そうでない場合もあります。
それは、相手と自分の関係性の構築を、どれくらい大切にしているのかによります。

そして、シャインは、「人間関係の構築よりも、課題の遂行に価値をおく文化」が謙虚さを妨げており、その結果、本当は関係性があればスムーズに進むことが関係性の構築に時間も労力もお金も投資しがないままに進めることで、トラブルや問題となっていることが、とても多いと指摘しています。

これは、私たちの仕事や生活の多くの場面でぶつかっている課題だと思います。

起業家が新しいことを始めようとしても、周りと関係性がなければ、「出る杭は打たれる」となります。
行政が新しい施策を急に打ち出しても、住民はついていけません。
企業において経営層が改革策をつくって一方的に社員に伝えても、現場では動きません。

住民や社員らと対話やワークショップを積み重ね、新しいことの意味、なぜ必要なのか、
どんな不安があるのか、といったことを分かち合うプロセスが必要・・・
ということは、多くの人が理解している。
しかし、そこに必要な投資を十分には行っていないし、むしろ面倒なことと後回しにしていると、シャインは指摘しています。

これまで「自分の力で問題を解ける人」が優秀だとされてきました。
学校の試験では、一人で正しい答を出せると高い点がつき、「頭がいい」とされます。
そうすると、自分がわからないことを、わからないと人に伝え、助けてもらう人は、一人で解ける人よりも「劣っている」と思ってしまいがちです。そうすると、協力や関係性づくりのことも、どこか軽視してしまうのでしょう。

問いかけというと、「自分で考えるための情報集め」「自分の主張」と思われがちです。

しかし、相手のできることに関心を持ち、自分のわからないことを分かち合い、相手との関係性を培いながら、ともに考える「問いかけ」は、

一見遠回りに見えますが、多くの問題やトラブルを先に進める突破口になるのではないでしょうか?

 

◆2◆ 新年度、新しい学びを!

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■ ゼミ「問いかけ力を磨こう~ 本質を探り、変化を生む場をつくるために」

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情報があふれ、多様な選択肢がある時代に求められるのは、「問いかける力」。

6つの切り口から仕事の様々な場面で出会う問題に対して、 適切に問いを設定し、関係者と共有する力とは何か、ともに考えましょう。

*3月集中開催 3月25日(土)・26日(日) 2日間

*4月スタート木曜夜コース 4月20日(木)19時~ 全6回

*詳細・申し込みはこちらから  https://empublic.jp/questioning

 

■実践を通して学ぶ! 育休・復職後の働き方・キャリアを考える場のつくり方

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女性活躍推進、ダイバーシティの推進、働き方改革などが注目されいますが、 現場での活躍や女性が納得できるキャリア形成には、まだ多くの課題があります。

復職後の女性のための「育休後カフェ」に取り組んできた山口理栄さんとのコラボで 産休・育休・復職に関する対話やワークショップの企画・準備・運営を、 講義と実践体験を通して学ぶコースを開催します。

実践経験を積み、すぐに活躍できる実力を身につけることを目指します。

2日間の集中講義とワークショップ実践、ふりかえりのセットのコースです。

・4月22日(土)10:00~18:30、 4月23日(日)10:00~17:00
・ワークショップ実践
・9月9日(土) 10:00~16:00

詳細・申し込みはこちら https://empublic.jp/6836

 

■ ゼミ「サステナビリティ&ビジネス ~SDGS時代の事業構想力を身に着ける」(全5回)

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「サステナビリティ」は、単に環境問題にどう対応するのかに留まらず、 2020年代の世界におけるビジネスの価値を社会とコミュニケーションするためのテーマです。

2030年をゴールにする国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、 「だれ一人取り残されることがない世界」の実現に企業の参加を強く求めており、 欧州企業を始めとして、企業の動きは加速しています。

このコースでは、環境対策(コスト)ではなく、成長戦略として、 サステナビリティとビジネスの相互作用を高めていくは、どうしたらいいか、 立教大学経営学部の講義をビジネスパーソン向けにカスタマイズした教材と対話を通して考えます。

第1回(4/26):2020年代、SDGs時代のサステナビリティ&ビジネスとは?

第2回(5/31):ソーシャル、コミュニティの力をビジネスで活かすには?

第3回(6/18):国内外企業のサステナビリティ事業を分析する

第4回(6/28):責任なる企業に求められることは何か?どう実行するのか?

第5回(7/26):SDGs時代のサステナビリティ&ビジネスを構想する

詳細・申し込みはこちらから https://empublic.jp/6759

 

■ 対話「2025年の自分と仕事を考えよう」

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これからの経済社会の変化において、私たちの仕事はどう変わっていくのか。

情報誌「readiness for 2025」で紹介している変化を考える対話プログラムを体験し、  自分たちで実施する際の対話のポイントを学びます。

開催日 4月16日(日) 13:00~17:30

詳細・申し込み https://empublic.jp/6370

 

 

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株式会社エンパブリック メルマガ「根津の街から」

(第164号 2017年3月24日配信)

発行責任者=広石 拓司

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ご意見・ご感想は info@empublic.jp までご連絡ください。

皆さまのご意見・ご感想お待ちしています。

配信停止希望の方はこちらからお手続きをお願いします。

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実践を通して学ぶ! 育休・復職後の働き方・キャリアを考える場のつくり方

2025年のリーダーのための新常識 ~第6回 「助けてもらえる力」 周りと自分を信頼できるか?

もし、あなたの会社の後輩が、このように言っていたら、どう思いますか?
「新しい部署に配属され、わからないことがある時、
 僕は自分で勉強して考えて、できるだけやったうえで、
 どうしても困ったことを相談するのがいいと思うのです。
 その方が自分の力も着くからいいと思うのです」
努力しようという姿勢、なんでも人に頼るよりもずっといいと考える人も多いかもしれません。
確かに、そういう一面はあるのですが、
ただ、「どうしても困ったことがあったら相談する」というのには注意が必要です。
自分で解決しようとするあまり、相談が最後の最後になってしまったら、大きなロスが生じます。
途中段階では「まだ完成していない、困っていない」と、内容を隠してしまうかもしれません。
また、最初に相談して、何を、どう勉強したらいいか、先輩の経験からアドバイスをもらう方が
ずっと効率的に進むかもしれません。
自分の努力だけでなく、周りの人に助けてもらうことも、大切なビジネス・スキルです。
これまでの正解が通用する時代では、自力で答を出せる人が優秀とされてきました。
それが前提になると「自分のことは自分でできるように」という教育、「結果を出した個人を評価する」という成果主義など、「自己責任」を強調するようになります。すると、自分のタスク、責任、自分が生んだ成果を、周りの人の存在よりも重視する習慣がついてしまうでしょう。
一概には言えないかもしれませんが、周りに相談しないで一人で解決する”優秀な人”とは、
「周りの人たちの経験が視野に入っていない」「どう周りの人と相談・協力したらいいのかわからない」
ということなのかもしれません。
現代から2020年代へ、ますます変化が激しい時代になります。
それは、たくさんの「未知の状況」が生じていくということです。
「未知」を「自分の知らないこと」と考えると、「自分で勉強すればいい」となります。
しかし、本当の「未知」とは、これまでの経験が活かせない状況を指します。そこでは、これまでの視点や何が必要な情報なのか、どう学べばいいのかという前提自体が大きく変化している可能性が高いのです。
アインシュタインは「問題が生じた時と同じレベルの考え方では、問題は解けない」と言いました。
もし、自分たちのビジネスで、これまでの経験したことのない未知の状況や、想定外の失敗が起きた時、必要なのは「他者に助けを求める」ことです。他者とは、自分とは異なる経験、異なる価値観・視点、異なる優先順位をつけている人のことです。自分が「そんなのじゃダメだ」と思っていた人の中にヒントがあるかもしれません。
未知の状況でうまくいかない時に、「自分の力でなんとかする」「これまでの関係者で、これまでの体制、これまでの進め方」を優先することは、泥沼に陥ってしまう危険性が高まるでしょう。
困難な時、ただ助けを求めても、助けてはもらえません。
「助けてもらえる」には、周りを信頼し、周りの人が持っていることを受け容れ、自分が変化していくことを厭わない勇気も必要です。同時に、助ける価値があると思ってもらえるよう、自分たちの実現したいことなど自分たちの「あり方」を整えておく必要があります。
「助けてもらえる力」は、周りの人を、そして自分たちの未来を信頼することから生まれます。
ですから、助けてもらえる力は、困難に陥ってからでは遅いのです。
日常からのどう周りとの関係性を構築していくのか。それが変化、未知への対応力になるのです。
サンケイビジネスアイ 掲載サイト

2025年のリーダーのための新常識 ~ 第5回 「問いかけ(inquirey:インクワイアリ―)」 本質を探究する力

最近、「質問力」という言葉を耳にすることが増えたように思います。
それは、なぜなのでしょうか?
質問は、自分が疑問に感じる、自分の中に「問い」を持つことから始まります。
同じ状況にいても、問いを持つ人と持たない人がいます。
その違いを生み出すのは、状況に対する向き合い方です。
状況に受け身で接していると、「そういうものだ」と考え、問いは生まれません。
状況に対して自分の経験と照らし合わせながら、また、目指す姿を持ちながら向き合っている時、自分のイメージと現状のギャップが気になり、「問い」が生まれます。
つまり、「問い」が生まれている時は、状況に主体的に向き合っている時です。だから、質問力の高さは主体性の指標となると考えられるのです。
さらに考えると、「問い」には「答を知るための問い(question)」と「探求するための問いかけ(inquiry)」の2種類があります。
「答を知るための問い」は、自分の知りたい答を得ることができれば、そこで終わるような問いです。
「マーケティングって何?」に対して、「コトラーは・・・と言っている」「全米マーケティング協会の定義では・・・だ」と、専門家や権威などが出している「答」を求めることです。
それに対して「本質を探究するための問いかけ」は、問いが展開していきます。
「マーケティングって何?」に対して、「この本には・・・とあるが、自分の会社ではどうだろう?」「自分の会社でできていないのは、どうしてだろう?」「自分の会社の現状を活かすマーケティングって何だろう?」と問いが問いを生み出していくような問いです。
これまで、「問い」は、答を知るためのものだと思われてきました。受験勉強では、先生の出す問いに生徒は答えます。同様に、ビジネスの現場でも「問い」が生まれたら、専門家(本、講演、コンサルタント)から答を教えてほしいと考えてきました。逆に、専門家も「これが正解だから、これを知れば解決する」と伝えてきました。しかし、その結果、「答」を知っているのに、実際には活かせない状況も多数生まれています。
一方で、「本質を探究する問いかけ」をする人は、これまで、ちょっと面倒な奴と考えられがちでした。問いが問いを生むのはキリがなく、「どうして?」「そもそも」という問いを出し続ける人は哲学論争をしかけているようで、実践的な意味はないと考えられがちでした。
しかし、現在は、そしてこれから2020年代にかけて変化の時代です。昨日の正しさが明日も通用するとは限りません。
変化する状況の中で短期的な答を追い求めるだけでは状況に振り回されるばかりですが、本質を求める問いかけを行うことで状況に動じない軸ができるでしょう。
例えば、主力商品の売り上げが落ちてきた時に求められるのは、「どうしたらもっと売れるのか?」「続けるか撤退か」というすぐに答を求める問いよりも、「どうして、この商品を自分たちは販売しているのか?販売し続けるのか?」「この商品は、5年後、10年後、どうなっていくのか? それはどうしてなのか?」といった問いかけです。メンバーやステークホルダーに問いかけ、自分たちがどうありたいのか定めていくことで、長期的な信頼関係を構築できる力が求められます。
2020年代、時代がスピードアップするからこそ、自分たちの軸をしっかり問いかける力が求められています。
サンケイビジネスアイの掲載サイト

図式化vs多様性 – empublicメルマガ「根津の街から」(2017年3月4日)

◆図式化vs多様性 – empublicメールマガジン「根津の街から」 -◆

(2017年3月4日発行)

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2/25に山形県鶴岡市の鶴岡ナリワイプロジェクトの報告会に参加してきました。
始まる前は「主婦で起業する人なんていない」と言われていたそうですが、2年間で30人が小規模な起業を立ち上げました。一人ひとりに眠る力を大切に守り立てることで、新しい仕事を生み出せる可能性を改めて感じました! (広石)

<INDEX>

1.コラム「住民って誰? ~ 図式化vs多様性」

2.一人ひとりを守り立てるプロセスを、ともに考えましょう!

・コミュニティ起業コーディネーター講座(入門編) 3/20

・ゼミ「問いかけ力を磨こう」 3月集中講座、4月~木曜夜コース

3.「readiness for 2025」杉並区でのワークショップ情報など

4.編集後記

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 ◆1◆ コラム「住民って誰? ~ 図式化vs多様性 」(広石)

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「地域住民の参加が必要」「地域の高齢者のために」「主婦が顧客」といった表現を日常的に使っています。

その時に注意が必要なのは、「地域住民」「高齢者」「主婦」と一括りにしてしまうことで、無意識のうちに、その集団にいる人を同質的な存在と考えがちだということです。実際には、「地域住民」「主婦」「高齢者」には、実に多彩な経験や知識、スキルを持つ一人ひとりが含まれています。

当たり前のようなことですが、意外と見落とされがちだと思います。

以前、地域プロジェクトの発表会に参加した人が「地域の50代の人が、すごく上手なプレゼンをしていて驚いた」という感想を話していました。「あの人は大手電機メーカーの**社で事業開発をしている人だ」と話すと、「なるほど!」と。
「地域住民が地域活動について発表する」というと、発表者をビジネスとは別の世界の人として見てしまい、ビジネススキルも弱いだろうと考えてしまいます。しかし、地域に暮らす人は、それぞれ仕事をしており、多面的な経験を持っている存在です。

心理学に「スキーマ」という用語があります。
対象の認知や判断を効率的に行うために、図式化して認識することを意味します。
日本人は」「団塊の世代は」「ゆとり世代は」と、傾向や特徴と思われることで一括りにして扱うことです。スキーマは悪いことでなく、それがあるからこそ、多数の情報を処理でき、効率的に物事を進めることができます。また、「この人は???だから」と考えることで、自分とは違う考えの人を受けとめやすくなる効果もあります。スキーマは必要なのですが、図式化していることに無批判でいると、知らぬうちに「決めつけ」になってしまいます。

アメリカで、中東7か国の人の入国を禁止するというニュースを聞くと、「おかしい」「全員がテロではないのに」と思ってしまいます。
ただ、それは、私たちが「日本人は」「地域住民は」「高齢者は」と一括りにしていることにもつながっています。

一人ひとりの個性に関心を持つこと。

その大切さを多くの人が理解しているのですが、実行はとても難しいものです。
「自分とは意見が違う」「あの行動はわからない」と感じた時、一歩踏みとどまって、「どうして、あの人はそうするのだろう?何がそうさせているのだろう?」と相手に関心を持ち続ける問いかけをしていくこと。

そこから多様性が始まるのでしょう。

 

◆2◆ 一人ひとりを守り立てるプロセスを、ともに考えましょう!

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 〇 コミュニティ起業コーディネーター講座(入門編)
~ ソーシャルキャピタルを活かす起業支援の手法 <3/20開催!>

地域に暮らす一人ひとりの経験や知識、スキル、そして思いを地域で活かす最も効果的な方法は、「対話を通して、自分たちを活かす仕事をつくる」ことだと私たちは考えています。
地域に新しい仕事が生まれることで、新しいつながり、新しい役割が地域に生まれます。

そんな地域に根付いた起業には、お金の資本以上に「関係性の資本=ソーシャルキャピタル」という元手が重要な意味を持ちます。

都市、地方での実践経験と事例分析を基に、地域で新しい事業・活動を立ち上げ、成長していく環境を整える「コミュニティ起業コーディネーター」に必要なノウハウを学ぶ講座を開催します。

*日時:3月20日(月・祝) 10:00~16:00

*詳細・申込 https://empublic.jp/6791

 

〇ゼミ「問いかけ力を磨こう」 3月集中講座、4月~木曜夜コース

「問いかけ力を磨こう」で大切にしているのは、「答を求めるだけの問い(question)」ではなく、 周りの人たちに働きかけながら、ともに本質を探る「探求としての問い(inquiry)」です。

同時に、出来事や人の言動の背景にある「文脈(context)」を丁寧に把握し、それを踏まえた次のアクションを生み出すための視点・視野・視座の持ち方も演習と対話で学びます。

多忙のため、遠隔のため、何度も行くのが難しい方のための集中開催、4月からの木曜夜コースの募集を行っています。ぜひ、この機会にご参加ください!

*3月集中開催 3月25日(土)・26日(日) 2日で6コマを集中して

*4月スタート木曜夜コース 4月20日(木)19時~ 全6回

*詳細・申し込みはこちらから  https://empublic.jp/questioning

 

〇ワークショップ・デザイン(参加型の学びの場のつくり方)
〇雑談から始まるファシリと場づくり(つながりと協力を促すファシリテーションの基礎)

一人ひとりの可能性を守り立てるために、どのような場づくりが必要なのか。
学びの場のプログラム開発に焦点をあてた「ワークショップ・デザイン」、ファシリテーション体験から学ぶ「雑談から始まるファシリと場づくり」
新年度のスタートに、セットでいかがですか?(セット割あります!)

*ワークショップ・デザイン 4/8(土) 10:30-16:30
*雑談から始まるファシリと場づくり 4/7(金)19:00-22:00

根津スタジオ・ページよりご確認ください https://empublic.jp/nez_studio

 

 

 ◆3◆ readiness for 2025 : 2025年の地域・仕事・自分を語ろう

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「readiness for 2025」は、今、起きている変化(未来の芽)に向き合い、2025年に充実した仕事を行うための変革促進プログラムです。 好評いただいている情報誌「readiness for 2025」に加え、地域や根津スタジオでの対話も実施しています。

 

 *すぎなみ大人塾・すぎなみ地域大学特別講演会 「2025年のすぎなみと自分を考えよう

日時 3月12日(日)14時~ 会場 セシオン杉並(東高円寺)

杉並区で「readiness for 2025」をテーマにした講演を行います。
現在の生活や仕事が未来につながっている「未来の芽」を探す公園とワークショップです。

 

 *根津スタジオ「2025年の自分と仕事を考えよう

日時 4/16(日) 13:00~17:30

情報誌「readiness for 2025」で紹介しているm変化を考える対話プログラムを体験し、自分たちで実施する際の対話のポイントを学びます。 2月実施を踏まえて、より充実した対話となるよう改訂しました。

上記の詳細は特設ページ https://empublic.jp/readiness-for-2025 にて。

情報誌も好評発売中です!

 

 

 ◆4◆ 編集後記

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あたたかくなり、花粉も飛び交い、マスクが手放せない季節です。

それでも、通勤途中に梅や桃の花に出会ったり、家の小さなプランターにチューリップの芽を発見したりすると、春だな、嬉しいな、と思います。
お散歩したくなる時期だからでしょうか、エンパブリックのサイトでは「まちあるき」ワークシートのダウンロードが増えていたりもします。
それぞれに春の到来を楽しめますように。 (佐藤)

 

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株式会社エンパブリック メルマガ「根津の街から」

(第163号 2017年3月4日配信)

発行責任者=広石 拓司

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