2025年のリーダーのための新常識 ~ 第4回「unlearn(学びほぐし) 」 知識よりも知恵を

変化の激しい時代に、状況に応じた対応を行っていこうとする時、大きく邪魔をするものがあります。
それは「正しい知識」にこだわる心です。
知識を持つことは、とても大切です。
しかし、「知識ありき」になってしまうと、自分の知識に照らし合わせて、正しいかどうかを判断してしまうことがあります。目の前の現実よりも、知識の方を優先して考えてしまうのです。
例えば、マーケティングやリーダーシップについて、理論の体系を知識として学んだ人が、「うちの会社のしていることは、マーケティングの理論にあっていないから駄目だ」と語る時、自分の知識のフィルダーで目の前の現実を見てしまっています。批評家や研究者なら、それでいいのですが、現場での実践では使えません。
目の前で起きている状況をしっかりと把握し、自分の学んできたことを総動員して、どうしたら今の良いところを活かしつつ良くできるか、考えきる力こそが、現場で”使える”知力です。
変化が激しく、想定外のことが起きる時、先ずは「このはずだ」というフィルターを通さずに、「現実をありのままに見る」ことが必要となります。そして、理論の体系に縛られず、今まで学んだことを総動員して、組み合わせ、その場での「ユニークな解」を生み出すことが必要となります。
知識の体系に縛られずに状況に向き合うことを、UNLEARNと言います。
LEARN(学び)の否定形ですが、これは学びを否定しているのではありません。
日本語では「学びほぐし」と訳されることがあります。
この言葉を有名にしたのは、スター・ウォーズのヨーダです。
「スター・ウォーズ帝国の逆襲」で、ルークはジェダイ・マスターヨーダのもとでフォースの修行をしています。そんな時、ルークの乗ってきた宇宙船が沼に沈んでしまいます。
ヨーダは「フォースの力を使えば、引き上げることができる」と語り、ルークは「やってみる」と答えます。
それに対して、ヨーダは、このように語ります。
 No! Try not!  Do, or do not.  There is no try.
 You must unlearn what you have learned.
自分の今までの常識や修行で学んできたことに縛られず、目の前の状況に集中することの大切さを伝えます。
「やってみる」には、失敗するかもしれない気持ちがありますが、目の前の状況に向き合うとは、後先考えずに「する」と決めることだと伝えるのです。
UNLEARNが苦手な人には、2つのタイプがあります。
1つが「知っている」ことを重視するタイプの人です。現場よりも書籍や学校で学ぶことを重視する人でもあります。「ハーバード大では・・・」といった書籍の内容を語るのが好きな人もそうでしょう。
もう1つが、自分の経験から判断する人です。営業を20年してきた人が「営業はこうしなければダメだ」と決めつけてしまうようなタイプです。
知識のある人、現場経験の豊富な人ほど、新しい状況に対して学ぶことが大切です。
この時に必要な学びは、今までの自分の知識や経験をほぐして、目の前の新しい状況を受け入れ、そこから新しい視点を得て、新しい知恵を生み出していくためのUNLEARNの学びなのです。
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2025年のリーダーのための新常識 ~第3回「レジリエンス 」~『計画通り』にこだわらない心」

前回、これからはVUCAの時代で、確かな計画や完全な準備などはない中で生き抜く力が求められると書きました。そのように変化が激しい時代で、思い通りにいかない時に求められるのが「レジリエンス」です。

 近年、レジリエンスという言葉を目にすることも増えてきています。
 もともとは物理用語で、復元力・回復力を意味しました。物体には、外部からの力(ストレス)がかかった時に、もとに戻そうとする力が働きます。そこから始まり、建物などが地震に対して対応する力、地域が災害にあっても対応し、復元していく力などにも使われると共に、心理学でも「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセス(全米心理学会)」と使われるようになりました。
 今、「レジリエンス」という言葉で検索すると、「折れない心」という言葉と結びつけた記事がたくさん見られます。逆境に耐え、克服できる力といった意味合いで使われ、研修なども増えています。逆に考えると、それだけ、逆境におかれた時に「心が折れる」人が増えているということでしょう。
「逆境で心が折れる」とは「自分の思い通り、計画通りに物事を進まないことで、目的やゴールの達成意欲が失われてしまう」状況を表しています。つまり、「レジリエンス」という言葉が流行り始めているのは、「思い通り・計画通り進まない状況への向き合い方」を求めている人が増えているのだと考えられます。
 私たちは、計画通りに進むことが良いことであり、計画通りに進められる人が優秀だという雰囲気の中で育ち、仕事をしてきました。その前提には「計画を立てた時に想定した状況や環境が計画実行中に変わらない」という考え方があります。しかし、現代社会、そしてこれからのVUCAの時代には、状況や環境は変化するのが当たり前です。
 大切なのは、状況や環境は変化するのは当たり前と受け容れたうえで、ゴールへの達成を諦めないことです。計画通りに進む、ミスなく進むことが大切なのか、ゴールへの到達が大切なのか、そこは混乱しがちです。
 以前、サッカーのジーコがインタビューで、日本の選手が試合中に点を取られると落ち込んだり、動揺したりするのが、よくわからなかったと話していました。大切なのは、試合終了時に相手よりも多くの点を取っていることなのに、点を取られたこと自体に動揺しているというのです。
これも、ゴールへの到達よりも、自分の思っている通りに物事が進んでいるのかにこだわってしまう心理を表現しているのでしょう。
 計画通りに進むことを重視する文化の組織は、レジリエンスが弱い組織に陥りがちです。
 計画通りに進むことよりも、紆余曲折がありながら、予定も変わりながらでも、ゴールに到達することが大切だと考える文化があって初めて、
 ・思ったようにいかないことは当たり前
 ・決めたことも環境や状況の変化に応じて変化させる必要がある
 ・うまくいかない時には、立ち止まったり、息抜きをして気持ちを切り替える必要がある
 ・自分ができていないことを周りに伝え、協力を仰ぐ必要がある
といった、レジリエンスを高める考え方が身に付き、それが変化に強い組織をつくることにもなります。
 その時に大切なのは、紆余曲折してまでも、自分の力不足を受け容れてまでも、達成したい「ゴール」が自分の中にあるかということです。
 何を、どうして実現したいのか。そこを見失うと、VUCAの時代には迷子になってしまうのです。
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2025年のリーダーのための新常識 ~第2回 「VUCA」  一寸先は変化の時代

VUCAとは、不確かで先の見通せない状況を生み出す
 ・Volatility 変動性
 ・Uncertainty 不確実性
 ・Complexity 複雑性
 ・Ambiguity 曖昧性
の4つの要素の頭文字を集めた言葉です。
環境が激しく変化する状況を、VUCAワールドと表現し、不確かな状況での経営やリーダーのあり方を考える際に使われる言葉です。
もともとは軍事用語として使われていました。
かつての国対国の戦争の時代には、戦力、兵力、備蓄、補給路などは比較的明確で、組織的な戦争が前提となっていました。リーダーは兵力を計算し、作戦を立て、指示を出し、兵士は作戦と指示を守って動くことが役割でした。
しかし、テロとの戦いになると、相手は個人のネットワークがベースとなり、組織だった軍とは全く異なる論理での動きとなります。目まぐるしく変わる状況の中で、状況に応じて作戦は随時変更され、兵士は状況や作戦の変化が変化する中、自律的な複雑な判断も求められます。
このような変化の激しく、見通せない状況は、ビジネスでも同じです。
1年かけて中期計画を描いても、その間に前提としている状況が変化するかもしれません。
新しいものもどんどんコピーが生まれ、すぐに陳腐化したり、自分たちの市場に従来とは全く異なる分野から新しいプレイヤーが参入したりするかもしれません。
また、グローバルに、複雑につながるサプライチェーンのどこかで、トラブルや大災害が起きるかもしれません。
いつ、どこで「想定外」が起きてもおかしくない状況に対応する力が経営者にも現場職員にも求められる時代になってきています。
私たちは、よくわからない新しい出来事や、考えたくない変化、つまり「不都合な変化」を、どこか視野の外においておきたがる、また、重要ではないと思いたがる傾向があります。
しかし、VUCAの時代には、変化する状況を受け止め、何が起きているのかしっかりと把握し、自分で考えて判断し、それを行動に移していく必要があります。
2025年には、確かな計画や完全な準備などはない中で、生き抜き、成果を出す力が、生き抜く大前提になるでしょう。
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2025年のリーダーのための新常識 ~第1回 20世紀の会社と21世紀の会社

フジサンケイ イノベーションズアイに代表広石がコラムが掲載されています!
タイトルは「2025年のリーダーのための新常識」。よく聞くけど、実はなんだっけ?というビジネスタームを解説していきます!
第1回目は「20世紀の会社と21世紀の会社」です。
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「大人になったら、どんな仕事に就きたい?」
今でも多くの大人が子どもたちに、この質問をしています。学校で行われるキャリア教育でも、どんな仕事に就きたいのか考えるのがゴールになっているものがほとんどです。
ただ、この質問には、無意識の大前提があります。
それは、「子どもたちは、今ある仕事のどれかに就く」ということです。
しかし、こんな言葉があります。
「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時(2027年)に今は存在していない職に就くだろう」
このデューク大学の研究者のキャシー・デビットソン氏の言葉は、2011年のニューヨークポスト紙に掲載され、大きな反響を呼びました。
2011年度に小学校に入学した子どもは、今、小学6年生。「大人になったら?」という質問がされる年頃ですが、彼らの大半は、今はない仕事に就くとしたら、いったい大人たちは何を問いかけるといいのでしょうか?
この20年で、ビジネスの前提は大きく変化しました。
インターネットは情報の価値、購買のあり方、ものづくりや金融の仕組み自体の変化を促しました。近年では、AirbnbやUberなど個人と個人の取引が大きな存在感を持つようになってきています。
また、総人口は減少に転じ、高齢化率は4人に1人を超えています。
さらに気候変動などの環境問題は、無視できないリスクになってきています。
働き方や仕事に対する価値観も大きく変化してきています。
これらの変化は20年前から指摘され、「対応しなければいけない」と言われ続けてきましたが、どこかで「やがて変わらなきゃいけないが、それよりも目の前のことを(今までのやり方で)しなきゃ」と考え、根本的な変化を避けてきた会社や人も多かったように思います。
ただ、社会の変化が起きる時は、そのような人は一定数いるものです。
明治維新をふりかえると、日本銀行ができたのが明治十五年、大日本帝国憲法が発布されたのが明治二十二年です。前提が変化しても、それが社会全体で新しいルールとして根付くのには10~20年程度かかるということでしょう。
ただ、そう考えると「今までのやり方=20世紀のモデル」が通用するのは、2020年ごろまでだと考えられます。その先のビジネスは、今広がってきている「21世紀のモデル」しか通用しない時代がやってくるでしょう。
この連載では、2020年よりも先の経済社会にある「21世紀の会社」で働く人にとってのキーワードをまとめていきます。それらの多くは、今、すでに始まっています。既に取り入れている方も多いでしょう。
ただ、それが一部の人ではなく、ごく一般に、多くの仕事や暮らしの前提になる状況に向けて、改めてコンセプトや意味を確認する。そんな連載にできればと思っています。
最初は、変動する時代を表すキーワード「VUCA」を取り上げたいと思います。
これから、よろしくお願いします。
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【プレスリリース】ビジネス・市民活動の現場で必要な「相手に問いかける力」

2016年9月12日(月)、9月16日(金)に始まる「問いかけゼミ」のプレスリリースを掲載いたします。

PDFはこちらです

 

 

 

 

 

 

 

【2016/3/14~】ヘルシータウン・アイデアソンを実施しよう!~あらかわヘルシータウン・クリエイティ部 第2シーズンが始まります!

【2016/4/23】介護からの対話を広げよう!未来をつくるkaigoカフェ・ミーティングを共催します。

「未来をつくるkaigoカフェ」は、ご自身もケア・マネージャーとして働いている高瀬比左子さんが、介護に関する身近なテーマをもとに肩書や役職を気にせず自由に思いを語りあえる場をつくりたいという思いから、2013年夏に立ち上げた対話の場です。介護職発の対話を行うことで、介護に携わる人が自分自身の見落としていた可能性や自分自身の中に眠るものを呼び覚まし、一歩踏み出すきっかけを得てほしいという思いは、介護職はもちろん、幅広い職種や市民の共感を呼び活動が展開しています。 さらに読む