クラス担任のためのキャリアガイダンス「授業の中で”問いをつくる力”をどう育てるのか?」に、代表 広石が登場!

クラス担任のためのキャリアガイダンス(リクルート進学総研)の7月号の特集「授業の中で”問いをつくる力”をどう育てるのか?」で、エンパブリック代表の広石のインタビューを掲載いただいています。

アクティブ・ラーニングでは、生徒が自分で考えるよう促すことが大切とされていますが、その基本には、生徒自身が問いを持ち、周りに問いかけていくことが求められます。しかし、従来の教室では、先生が問いを出し、生徒は正しい答え方を学んで答えるという役割分担になっています。先生は解くことを教えるのが得意でも、問いをつくるよう促すのは苦手です。
生徒が問いを持つように促すには、先生がどう生徒に問いかければいいのか?ゼミ「問いかけ力を磨こう」の経験をもとに広石が話しています。

クラス担任のためのキャリアガイダンス(リクルート進学総研)の7月号

http://souken.shingakunet.com/career_g/2017/06/vol3720176-5c16.html

記事事のPDFはこちら
http://souken.shingakunet.com/…/2…/class/2017_ccvol37_01.pdf

ゼミ「問いかけ力を磨こう」  https://empublic.jp/questioning

マテリアリティ: 会社の軸を問いかけ続ける ~2025年のためのリーダーのための新常識 第9回

変化が激しい時代、そして、ただ財務的な成功だけでなく多面的な視点から経営を考えていく必要が高まる時代に問われるのは、会社の「軸」となるものです。
何が会社の軸となるのか考えるキーワードとして、「マテリアリティ(materiality )」が注目されています。materiality とは「意味が大きいこと・必要不可欠」といった意味です。

もともと、この用語が広がるきっかけとなったのは、企業のアカウンタビリティを専門とするイギリスの非営利団体「AccountAblity」の「マテリアリティ・レポート」です。

企業にとって、「成功するために何をするか」が最も大切なことですが、それには、経営の戦略やマネジメント(内部環境)と、新たな社会・環境の状況(外部環境)の方向性があっていないといけません。社会・環境の何が制約か、どのような新しい収益機会が生まれているのかは絶えず変化しているため、外部環境に敏感になり、内部環境を適応させていくことが重要になります。
ただ、外部環境も内部環境も要素が多く、どう結び付けていけばいいかは難しい問題です。
その時に、必要なのは議論の軸です。いったい自分たちは何を最も大切にするのかを明確にすること(=マテリアリティの特定)が必要です。それが明確になることで、ただ変化への対応に追われるだけでなく、変化を学びと改革の促進に活かすことができます。

ただし、マテリアリティは経営者が認識しているだけでは実行できません。
社内にもステークホルダーにも、納得し、力を合わせていけるように、なぜそれが大切なのか信頼できる方法でそれを明確に示さなければならないのです。

それゆえ、何がマテリアリティか定めること以上に、下記のようにマテリアリティを使いこなすことが求められています。
・持続可能な発展の課題と経営戦略の整合性を明確にするプロセスを重視する
・企業とステークホルダー双方にとっての優先事項を積極的に反映した企業報告書、広範なコミュニケーションに取り組む
・新たな社会的諸課題と現在の経営戦略とのギャップを特定して、社内での議論や戦略展開に反映させる

ここで重視されているのは、変化する社会・経済・環境の中で、持続可能な企業を実現するために、何が大切か、社内で、また、ステークホルダーとコミュニケーションを続けることです。

経済も社会も環境も変化する時代には「今、力を入れるべきこと」は変化し続けます。
「自分たちの大切なことは、これだ」という答よりも、常に考え、コミュニケーションを続けることが大切になってきています。

かつては、「自社の強みはこれだ。重視することはこれだ」と明確にでき、それは大きくは変化しませんでした。
しかし、社会の状況の変化が、会社の経営にも大きな影響を与える時代、「一度、決めたこと」にこだわり続けると、気づかない間に取り残され、大きな損失を生み出すかもしれません。

大切なことを決めるよりも、大切なことをコミュニケーションし続けることが、これからのリーダーには求められるのです。

サンケイビジネスアイ 掲載サイト
http://www.innovations-i.com/column/2025leader/9.html

2025年のリーダーのための新常識  第7回 「ソーシャルキャピタル 」 自分に問いかけてみてください。関係性の質が中長期投資を呼び込む

自分に問いかけてみてください。

新しいことを始めようとした時、あなたが困難な状況にある時に、損得を考えずに、手伝ってくれる人、助けてくれる人は、何人くらいいるでしょうか?
もし、たくさんの人の顔が浮かぶなら、あなたは豊かなソーシャルキャピタルを持っていると言えます。
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)という概念が知られるようになった一つのきっかけは、アメリカの政治学者R.D.パットナムの「孤独なボウリング」という書籍です。 パットナムは、アメリカでは1980年から93年の間にボウリングを楽しむ人は10%増加しましたが、クラブに所属してボウリングをする人は40%減少していると気づきました。仲間やグループでなく、一人で行う人が増えたのです。そして、地域のグループ活動の減少は政治参加や地域の豊かさなどにも相関が見らました。つまり、「孤独なボウリング」の情景は、仲間同士の会話や社会的交流の経験が失われ、地域のソーシャルキャピタルが減衰していることの象徴なのです。
そして、ソーシャルキャピタルを「人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を改善できる、信頼、規範、ネットワーク」と考えたのです。
日本では、近年、マラソンなど一人で行うスポーツの人気は高まっていますが、チームスポーツを行う人は減っているようです。場所不足もあるでしょうが、地域のソーシャルキャピタルが弱まっていることも関係しているでしょう。
このようにソーシャルキャピタルの概念は、当初、社会学で広がりましたが、経済や経営にも広がっています。
例えば、異業種交流課に参加し、名刺をたくさん集め、知り合いが増えたとしても、それがなかなかビジネスに結びつくことは少ないようです。必要なのは、営業先候補や自分の情報を伝える相手の情報であり、相手と関係性を培っていこうとしていないからでしょう。名刺交換が主の異業種交流会は、ソーシャルキャピタルを豊かにする機会になっていないのです。
会社について考えてみると、売上額が大きく、知っている人も多いのに、尊敬されていない会社、その会社の姿勢や考え方、社員のファンの少ない会社もあります。
そのような会社は、売上高がよく、成長している間は注目されますが、成長が止まったり、失敗したりすると人は離れていきます。そして、そのような会社は、短期的、利益目的の投資は集まっても、先が見えない時代に中長期的な投資は集まりにくいでしょう。
金銭的な信頼だけでなく、関係性に基づく信頼を、ステークホルダーとどれくらい構築できているかというソーシャルキャピタルは、中長期的な投資の重要な判断材料になってきているのです。
今は、ある年に最高益を出した事業が2、3年後には赤字になるということが頻繁に起きる時代です。今、財務が良くても、それだけでは中長期的な投資を行うことは難しくなっています。
国際的な「統合報告」の動きの中で「社会・関係資本」は「財務資本」と並び、6つの資本の一つとされています。統合報告ガイドラインでは社会・関係資本を、「個々のコミュニティ、ステークホルダー・グループ、その他のネットワーク間又はそれら内部の機関や関係、及び個別的・集合的幸福を高めるために情報を共有する能力」としています。
ステークホルダーと、規範や価値、行動を共有しているのか。組織への信頼を外部のステークホルダーとともに構築し、保持に努めているか。そして、対話の意思があるのか。それが、企業を評価するうえで、財務の結果と同様に大切だと考えられるようになっています。
もし停滞した時があっても、この会社なら可能性があると信頼してくれる人がいるか、新しいことを始める時に成功するかどうかわからなくても、一緒にトライしてくれる人がどれだけいるのか。それが中長期的な成長の基盤となるソーシャルキャピタルです。
経済・社会の変化が激しくなる時代に、中長期的な投資を呼び込む信頼を構築するには、どのようなステークホルダーと、どのように関係し、どのような対話を行っているのかが、ますます大切になるのです。
サンケイビジネスアイの掲載サイト

2025年のリーダーのための新常識 ~第6回 「助けてもらえる力」 周りと自分を信頼できるか?

もし、あなたの会社の後輩が、このように言っていたら、どう思いますか?
「新しい部署に配属され、わからないことがある時、
 僕は自分で勉強して考えて、できるだけやったうえで、
 どうしても困ったことを相談するのがいいと思うのです。
 その方が自分の力も着くからいいと思うのです」
努力しようという姿勢、なんでも人に頼るよりもずっといいと考える人も多いかもしれません。
確かに、そういう一面はあるのですが、
ただ、「どうしても困ったことがあったら相談する」というのには注意が必要です。
自分で解決しようとするあまり、相談が最後の最後になってしまったら、大きなロスが生じます。
途中段階では「まだ完成していない、困っていない」と、内容を隠してしまうかもしれません。
また、最初に相談して、何を、どう勉強したらいいか、先輩の経験からアドバイスをもらう方が
ずっと効率的に進むかもしれません。
自分の努力だけでなく、周りの人に助けてもらうことも、大切なビジネス・スキルです。
これまでの正解が通用する時代では、自力で答を出せる人が優秀とされてきました。
それが前提になると「自分のことは自分でできるように」という教育、「結果を出した個人を評価する」という成果主義など、「自己責任」を強調するようになります。すると、自分のタスク、責任、自分が生んだ成果を、周りの人の存在よりも重視する習慣がついてしまうでしょう。
一概には言えないかもしれませんが、周りに相談しないで一人で解決する”優秀な人”とは、
「周りの人たちの経験が視野に入っていない」「どう周りの人と相談・協力したらいいのかわからない」
ということなのかもしれません。
現代から2020年代へ、ますます変化が激しい時代になります。
それは、たくさんの「未知の状況」が生じていくということです。
「未知」を「自分の知らないこと」と考えると、「自分で勉強すればいい」となります。
しかし、本当の「未知」とは、これまでの経験が活かせない状況を指します。そこでは、これまでの視点や何が必要な情報なのか、どう学べばいいのかという前提自体が大きく変化している可能性が高いのです。
アインシュタインは「問題が生じた時と同じレベルの考え方では、問題は解けない」と言いました。
もし、自分たちのビジネスで、これまでの経験したことのない未知の状況や、想定外の失敗が起きた時、必要なのは「他者に助けを求める」ことです。他者とは、自分とは異なる経験、異なる価値観・視点、異なる優先順位をつけている人のことです。自分が「そんなのじゃダメだ」と思っていた人の中にヒントがあるかもしれません。
未知の状況でうまくいかない時に、「自分の力でなんとかする」「これまでの関係者で、これまでの体制、これまでの進め方」を優先することは、泥沼に陥ってしまう危険性が高まるでしょう。
困難な時、ただ助けを求めても、助けてはもらえません。
「助けてもらえる」には、周りを信頼し、周りの人が持っていることを受け容れ、自分が変化していくことを厭わない勇気も必要です。同時に、助ける価値があると思ってもらえるよう、自分たちの実現したいことなど自分たちの「あり方」を整えておく必要があります。
「助けてもらえる力」は、周りの人を、そして自分たちの未来を信頼することから生まれます。
ですから、助けてもらえる力は、困難に陥ってからでは遅いのです。
日常からのどう周りとの関係性を構築していくのか。それが変化、未知への対応力になるのです。
サンケイビジネスアイ 掲載サイト

2025年のリーダーのための新常識 ~ 第5回 「問いかけ(inquirey:インクワイアリ―)」 本質を探究する力

最近、「質問力」という言葉を耳にすることが増えたように思います。
それは、なぜなのでしょうか?
質問は、自分が疑問に感じる、自分の中に「問い」を持つことから始まります。
同じ状況にいても、問いを持つ人と持たない人がいます。
その違いを生み出すのは、状況に対する向き合い方です。
状況に受け身で接していると、「そういうものだ」と考え、問いは生まれません。
状況に対して自分の経験と照らし合わせながら、また、目指す姿を持ちながら向き合っている時、自分のイメージと現状のギャップが気になり、「問い」が生まれます。
つまり、「問い」が生まれている時は、状況に主体的に向き合っている時です。だから、質問力の高さは主体性の指標となると考えられるのです。
さらに考えると、「問い」には「答を知るための問い(question)」と「探求するための問いかけ(inquiry)」の2種類があります。
「答を知るための問い」は、自分の知りたい答を得ることができれば、そこで終わるような問いです。
「マーケティングって何?」に対して、「コトラーは・・・と言っている」「全米マーケティング協会の定義では・・・だ」と、専門家や権威などが出している「答」を求めることです。
それに対して「本質を探究するための問いかけ」は、問いが展開していきます。
「マーケティングって何?」に対して、「この本には・・・とあるが、自分の会社ではどうだろう?」「自分の会社でできていないのは、どうしてだろう?」「自分の会社の現状を活かすマーケティングって何だろう?」と問いが問いを生み出していくような問いです。
これまで、「問い」は、答を知るためのものだと思われてきました。受験勉強では、先生の出す問いに生徒は答えます。同様に、ビジネスの現場でも「問い」が生まれたら、専門家(本、講演、コンサルタント)から答を教えてほしいと考えてきました。逆に、専門家も「これが正解だから、これを知れば解決する」と伝えてきました。しかし、その結果、「答」を知っているのに、実際には活かせない状況も多数生まれています。
一方で、「本質を探究する問いかけ」をする人は、これまで、ちょっと面倒な奴と考えられがちでした。問いが問いを生むのはキリがなく、「どうして?」「そもそも」という問いを出し続ける人は哲学論争をしかけているようで、実践的な意味はないと考えられがちでした。
しかし、現在は、そしてこれから2020年代にかけて変化の時代です。昨日の正しさが明日も通用するとは限りません。
変化する状況の中で短期的な答を追い求めるだけでは状況に振り回されるばかりですが、本質を求める問いかけを行うことで状況に動じない軸ができるでしょう。
例えば、主力商品の売り上げが落ちてきた時に求められるのは、「どうしたらもっと売れるのか?」「続けるか撤退か」というすぐに答を求める問いよりも、「どうして、この商品を自分たちは販売しているのか?販売し続けるのか?」「この商品は、5年後、10年後、どうなっていくのか? それはどうしてなのか?」といった問いかけです。メンバーやステークホルダーに問いかけ、自分たちがどうありたいのか定めていくことで、長期的な信頼関係を構築できる力が求められます。
2020年代、時代がスピードアップするからこそ、自分たちの軸をしっかり問いかける力が求められています。
サンケイビジネスアイの掲載サイト

2025年のすぎなみと私を考えよう(3/12@杉並区)

代表の広石が杉並区で「readiness for 2025」をテーマにした講演を3月12日(日)に行います。
お近くの方、ぜひご参加ください。

また、根津スタジオでは、2025年を考える対話の体験とファシリテーションのコツを学べるプログラムを、4/16(日)に開催します。>こちら

エンパブリックの取り組む「readiness for 2025」のご案内はこちら

2025年に、自分はどのような暮らしをしているか、想像したことはありますか?

技術やグローバル化が進展し、経済の様子も変化し、環境問題や社会課題への対応の重要性は高まるでしょう。
また、団塊の世代は後期高齢者になり、地域社会の姿も変化しているでしょう。

未来がどうなるか正確に当てることはできませんが、確かなのは、現在の生活や仕事が未来につながっている、つまり、今の中に未来の芽があるということです。

この特別講座では、講義で現在から2025年に向けてどのような変化が起きているか紹介し、未来へのシナリオの作成のポイントを学びます。そして、ワークショップで、 2025年の自分と地域社会の姿を考えます。より良い未来を拓くために、何を学び、 どのようなつながりをつくっていきたいか、自分の未来へのストーリーを考えてみます。

 未来へ向けた次の一歩を、どう踏み出すか、一緒に考えてみませんか

開催日時:2017年3月12日(日) 午後1時半~4時(一部告知で開始時刻が間違えていました。13:30~です)

会場;セシオン杉並 2階 視聴覚室(梅里1-22-32 東高円寺)

講師:広石拓司(エンパブリック代表)

参加費:無料

こんな方にお勧め

  • 変化していく地域の未来を考えたい方
  • これから求められる仕事を考えたい方
  • 中期計画の立て方を知りたい方
  • 人生の後半戦をどう生きるか考えている方
  • すぎなみ大人塾の修了生の方、ご友人の方!

お問い合わせ・申し込みは電話・メールで

杉並区 協働推進課 地域人材育成係(すぎなみ地域大学担当)
電話03-3312-2381(平日8:30~17:15) E-MAIL:tiikidaigaku-t@city.suginami.lg.jp

チラシはこちら

2025年のリーダーのための新常識 ~ 第4回「unlearn(学びほぐし) 」 知識よりも知恵を

変化の激しい時代に、状況に応じた対応を行っていこうとする時、大きく邪魔をするものがあります。
それは「正しい知識」にこだわる心です。
知識を持つことは、とても大切です。
しかし、「知識ありき」になってしまうと、自分の知識に照らし合わせて、正しいかどうかを判断してしまうことがあります。目の前の現実よりも、知識の方を優先して考えてしまうのです。
例えば、マーケティングやリーダーシップについて、理論の体系を知識として学んだ人が、「うちの会社のしていることは、マーケティングの理論にあっていないから駄目だ」と語る時、自分の知識のフィルダーで目の前の現実を見てしまっています。批評家や研究者なら、それでいいのですが、現場での実践では使えません。
目の前で起きている状況をしっかりと把握し、自分の学んできたことを総動員して、どうしたら今の良いところを活かしつつ良くできるか、考えきる力こそが、現場で”使える”知力です。
変化が激しく、想定外のことが起きる時、先ずは「このはずだ」というフィルターを通さずに、「現実をありのままに見る」ことが必要となります。そして、理論の体系に縛られず、今まで学んだことを総動員して、組み合わせ、その場での「ユニークな解」を生み出すことが必要となります。
知識の体系に縛られずに状況に向き合うことを、UNLEARNと言います。
LEARN(学び)の否定形ですが、これは学びを否定しているのではありません。
日本語では「学びほぐし」と訳されることがあります。
この言葉を有名にしたのは、スター・ウォーズのヨーダです。
「スター・ウォーズ帝国の逆襲」で、ルークはジェダイ・マスターヨーダのもとでフォースの修行をしています。そんな時、ルークの乗ってきた宇宙船が沼に沈んでしまいます。
ヨーダは「フォースの力を使えば、引き上げることができる」と語り、ルークは「やってみる」と答えます。
それに対して、ヨーダは、このように語ります。
 No! Try not!  Do, or do not.  There is no try.
 You must unlearn what you have learned.
自分の今までの常識や修行で学んできたことに縛られず、目の前の状況に集中することの大切さを伝えます。
「やってみる」には、失敗するかもしれない気持ちがありますが、目の前の状況に向き合うとは、後先考えずに「する」と決めることだと伝えるのです。
UNLEARNが苦手な人には、2つのタイプがあります。
1つが「知っている」ことを重視するタイプの人です。現場よりも書籍や学校で学ぶことを重視する人でもあります。「ハーバード大では・・・」といった書籍の内容を語るのが好きな人もそうでしょう。
もう1つが、自分の経験から判断する人です。営業を20年してきた人が「営業はこうしなければダメだ」と決めつけてしまうようなタイプです。
知識のある人、現場経験の豊富な人ほど、新しい状況に対して学ぶことが大切です。
この時に必要な学びは、今までの自分の知識や経験をほぐして、目の前の新しい状況を受け入れ、そこから新しい視点を得て、新しい知恵を生み出していくためのUNLEARNの学びなのです。
サンケイビジネスアイの掲載サイト

2025年のリーダーのための新常識 ~第3回「レジリエンス 」~『計画通り』にこだわらない心」

前回、これからはVUCAの時代で、確かな計画や完全な準備などはない中で生き抜く力が求められると書きました。そのように変化が激しい時代で、思い通りにいかない時に求められるのが「レジリエンス」です。

 近年、レジリエンスという言葉を目にすることも増えてきています。
 もともとは物理用語で、復元力・回復力を意味しました。物体には、外部からの力(ストレス)がかかった時に、もとに戻そうとする力が働きます。そこから始まり、建物などが地震に対して対応する力、地域が災害にあっても対応し、復元していく力などにも使われると共に、心理学でも「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセス(全米心理学会)」と使われるようになりました。
 今、「レジリエンス」という言葉で検索すると、「折れない心」という言葉と結びつけた記事がたくさん見られます。逆境に耐え、克服できる力といった意味合いで使われ、研修なども増えています。逆に考えると、それだけ、逆境におかれた時に「心が折れる」人が増えているということでしょう。
「逆境で心が折れる」とは「自分の思い通り、計画通りに物事を進まないことで、目的やゴールの達成意欲が失われてしまう」状況を表しています。つまり、「レジリエンス」という言葉が流行り始めているのは、「思い通り・計画通り進まない状況への向き合い方」を求めている人が増えているのだと考えられます。
 私たちは、計画通りに進むことが良いことであり、計画通りに進められる人が優秀だという雰囲気の中で育ち、仕事をしてきました。その前提には「計画を立てた時に想定した状況や環境が計画実行中に変わらない」という考え方があります。しかし、現代社会、そしてこれからのVUCAの時代には、状況や環境は変化するのが当たり前です。
 大切なのは、状況や環境は変化するのは当たり前と受け容れたうえで、ゴールへの達成を諦めないことです。計画通りに進む、ミスなく進むことが大切なのか、ゴールへの到達が大切なのか、そこは混乱しがちです。
 以前、サッカーのジーコがインタビューで、日本の選手が試合中に点を取られると落ち込んだり、動揺したりするのが、よくわからなかったと話していました。大切なのは、試合終了時に相手よりも多くの点を取っていることなのに、点を取られたこと自体に動揺しているというのです。
これも、ゴールへの到達よりも、自分の思っている通りに物事が進んでいるのかにこだわってしまう心理を表現しているのでしょう。
 計画通りに進むことを重視する文化の組織は、レジリエンスが弱い組織に陥りがちです。
 計画通りに進むことよりも、紆余曲折がありながら、予定も変わりながらでも、ゴールに到達することが大切だと考える文化があって初めて、
 ・思ったようにいかないことは当たり前
 ・決めたことも環境や状況の変化に応じて変化させる必要がある
 ・うまくいかない時には、立ち止まったり、息抜きをして気持ちを切り替える必要がある
 ・自分ができていないことを周りに伝え、協力を仰ぐ必要がある
といった、レジリエンスを高める考え方が身に付き、それが変化に強い組織をつくることにもなります。
 その時に大切なのは、紆余曲折してまでも、自分の力不足を受け容れてまでも、達成したい「ゴール」が自分の中にあるかということです。
 何を、どうして実現したいのか。そこを見失うと、VUCAの時代には迷子になってしまうのです。
サンケイビジネスアイ 掲載ページ

2025年のリーダーのための新常識 ~第2回 「VUCA」  一寸先は変化の時代

VUCAとは、不確かで先の見通せない状況を生み出す
 ・Volatility 変動性
 ・Uncertainty 不確実性
 ・Complexity 複雑性
 ・Ambiguity 曖昧性
の4つの要素の頭文字を集めた言葉です。
環境が激しく変化する状況を、VUCAワールドと表現し、不確かな状況での経営やリーダーのあり方を考える際に使われる言葉です。
もともとは軍事用語として使われていました。
かつての国対国の戦争の時代には、戦力、兵力、備蓄、補給路などは比較的明確で、組織的な戦争が前提となっていました。リーダーは兵力を計算し、作戦を立て、指示を出し、兵士は作戦と指示を守って動くことが役割でした。
しかし、テロとの戦いになると、相手は個人のネットワークがベースとなり、組織だった軍とは全く異なる論理での動きとなります。目まぐるしく変わる状況の中で、状況に応じて作戦は随時変更され、兵士は状況や作戦の変化が変化する中、自律的な複雑な判断も求められます。
このような変化の激しく、見通せない状況は、ビジネスでも同じです。
1年かけて中期計画を描いても、その間に前提としている状況が変化するかもしれません。
新しいものもどんどんコピーが生まれ、すぐに陳腐化したり、自分たちの市場に従来とは全く異なる分野から新しいプレイヤーが参入したりするかもしれません。
また、グローバルに、複雑につながるサプライチェーンのどこかで、トラブルや大災害が起きるかもしれません。
いつ、どこで「想定外」が起きてもおかしくない状況に対応する力が経営者にも現場職員にも求められる時代になってきています。
私たちは、よくわからない新しい出来事や、考えたくない変化、つまり「不都合な変化」を、どこか視野の外においておきたがる、また、重要ではないと思いたがる傾向があります。
しかし、VUCAの時代には、変化する状況を受け止め、何が起きているのかしっかりと把握し、自分で考えて判断し、それを行動に移していく必要があります。
2025年には、確かな計画や完全な準備などはない中で、生き抜き、成果を出す力が、生き抜く大前提になるでしょう。
サンケイビジネスアイの掲載サイト