empublicメールマガジン「行き過ぎた資本主義の処方箋としての“贈与”」~根津の街から(2024年3月29日)

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◆1◆ 広石コラム「行き過ぎた資本主義の処方箋としての“贈与” 」
◆2◆【対話】”贈り物”はどうして特別なんだろう?「贈与論」から考える
~ コスパ重視の”経済人間”を超えて、”お互いさまの関係”を今の社会で機能させるには?
◆3◆地域でのつながりは、どうすれば活きるのだろう?
~“贈りあう関わり” からコミュニティを問う書籍「経済社会学から考える現代の地域協働」を著者古市太郎さんと読もう
◆4◆【講座】参加型の学びの場の創り方
~ワークショップ、参加型の講座・研修をデザインする技法
◆5◆ empublic Studio説明会 開催!
◆6◆ empublic Studioラジオ「empublicの一語一歩」
◆7◆編集後記
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年度末となり、まだまだ寒いですが、ようやく春らしさを感じる日も増え、週末には桜の開花予報も出ていますね。
4月のエンパブリックは、根津のスタジオで対面でのイベントも開催していきます。
参加されるみなさんにとってのオンラインの便利さと、対面ならではの空気感をより良く活用していただけたらと思っています。
新年度のスタートにエンパブリックのコンテンツもご活用ください。(中村)

◆1◆ 広石コラム「行き過ぎた資本主義の処方箋としての“贈与”」
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お正月に、親戚の子どもに3000円のお札をそのまま渡すのと、「お年玉」と書いたポチ袋に入れて渡すのでは違ったものになるでしょう。
買ってきたお菓子を同僚にそのまま渡すのと、「いつもありがとう」とカードを添えてリボンを付けて渡すのも違ったものになるでしょう。

「贈り物」には、渡されるモノに+αの価値を加えます。
“モノ”は金銭取引の対象だけではない、気持ちを届けたり、関係を生み出したりすることもできます。
逆に、以前はご近所のつながりの中で行っていた(=地域の関係性の内部にあった)ことを、事業者に委託してサービス提供してもらう(=地域活動の外部化)ことで、意味が変わることもあります。
かつては地域の助け合いで行っていた「お葬式」も、今は個々人が葬儀会社で行います。
それは、ご近所の方が亡くなっていても「知らなかった」という状況になります。
もし神社のお祭りをイベント会社の運営の有料イベントにしてしまうと、何かが失われてしまうでしょう。

私たちは「経済社会」の中で生きる中で、利便性から地域内で行っていたことを外部サービス化し続け、今では「モノやサービスはお金を使って購入する」ことが当たり前の社会に住んでいます。
そして、気づけばあらゆるものの“価値”を「お金に換算して考える」ということが習慣になってしまっています。
地域づくりやスポーツの価値も“経済効果”で考え、人や仕事の価値も収入の多寡で考え、その判断を「合理的」と呼んでしまう。
それが「本当に欲しいものはないのにお金は増やしたい」「周りが持っている高いものを買うためにお金が必要」という悪循環に陥っているのかもしれません。

そのような社会で“ご近所づきあい”“地域コミュニティ”は、人の関わりから生じる面倒が多いのにメリットが小さいものと考えてしまいがちです。

ただ、「人のつながり」は、そのようなものだけではないのではないか?
すべてを金銭的価値だけで考えるのは、行き過ぎた資本主義なのではないか?
そう考える人たちが、近年、改めて「贈与」の価値に注目しています。

モノやサービスを金銭取引の対象として考えるだけではなく、贈与を通して思いを分かち合い、関係性を育むきっかけを増やすことでは大切ではないか?
実は「贈与」というやり取りが、金銭万能の行き過ぎた資本主義への処方箋になるという考察は、1925年にモースが「贈与論」の中で訴えたことなのです。
モースはポリネシアなどの社会では、贈与にもとづく交換関係が取引よりも優越しており、それが人と人の関わり方やコミュニティの成り立ちの根幹に関わっていると指摘しました。
そして、そこからの学びを近代的な経済社会も学びなおし、自由と義務、気前の良さと倹約・利益を最融合させることによって、もっと豊かな社会をつくることができると述べています。

このモースの考えに注目し、そこから地域コミュニティの意味を考察しながら、文京区での学習支援やこども食堂の活動につなげてきたのが、社会哲学者の古市太郎さんです。

古市さんは地域コミュニティを、公共性から考えるだけでなく、個人視点から考え、「贈与」が生み出す“意味”に注目してきました。
例えば、こども食堂には「食事を安く提供する」という経済的な意味だけでなく、「地域のこどもの置かれた課題を地域の人が見過ごさず、共にあろうとする関わり」という地域の人の意思が込められています。

そこで、改めてコミュニティやつながりの意味を「贈与」から、古市太郎さんと一緒に考えようという会を4月に2回開催します。
改めて「贈与」とは? つながりとは? そしてコミュニティや地域での協働とは?を理論的な視点から考えてみませんか?

◆2◆ ”贈り物”はどうして特別なんだろう?「贈与論」から考える
~ コスパ重視の”経済人間”を超えて、”お互いさまの関係”を今の社会で機能させるには?
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この贈与の機能についての考察の先駆けとなったモース「贈与論」(1925)の内容を知り、そこから現代の社会において「贈与」を見直すことは、なぜ大切なのか、古市太郎さんと考えます。
〇開催日:2024年4月11日(木)20:00~21:45
〇開催方法:対面(エンパブリック根津スタジオ)+オンライン
詳細・申込はこちら https://peatix.com/event/3890155

◆3◆ 地域でのつながりは、どうすれば活きるのだろう?
~“贈りあう関わり” からコミュニティを問う書籍「経済社会学から考える現代の地域協働」を著者古市太郎さんと読もう
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古市太郎さんの書籍「経済社会学から考える現代の地域協働」をヒントに、地域コミュニティの理論・政策・歴史をふりかえり、改めて人と人の関わりを「贈与」から見直していきます。
人のつながる活動の意味を、改めて一緒に考えましょう!
〇開催日:2024年4月24日(水)20:00~21:45
〇開催方法:対面(エンパブリック根津スタジオ)+オンライン
詳細・申込はこちら https://peatix.com/event/3900752/

◆4◆【講座】参加型の学びの場の創り方 ~ワークショップ、参加型の講座・研修をデザインする技法
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セミナーや研修、イベント、学習会を、一方通行の講義・座学から、双方向型で、参加者同士でも学びあい、その体験が変化を生み出すようなワークショップに変えていきたい方、
行っている学びの場の企画・運営を磨きたい方、基礎から実際の企画までを学ぶためのプログラムを開催します。
〇開催日:2024年4月20日(土)13:00~17:30
〇開催方法:対面(エンパブリック根津スタジオ)+オンライン
詳細・申込はこちら https://peatix.com/event/3878065/

◆5◆ empublic Studio説明会 開催!
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「変化・価値創造・協働のソフトスキル」を多くの人が使いこなせるように、コンテンツやセッション、体験機会を広げる交流の場が、empublic Studio です。
新年度に新しいことを始めようと思っている方に、ぜひスタジオを活用いただければと思います。
4月から毎月1回スタジオ説明会を開催していきます。その第一弾です。
スタジオのことが気になっている方、どう使えるのか知りたい方(登録済の方も含めて!)、ぜひお立ち寄りください。
〇開催日:2024年4月9日(火)20:30~21:30
〇開催方法:オンライン
参加登録 https://peatix.com/event/3900945/

◆6◆empublic Studioラジオ「empublicの一語一歩」
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毎週一つ「気になる言葉」を取り上げ、そこから今の社会や仕事・暮らしのヒントとなることを考えていくオンラインラジオです。
SpotifyとApple Podcastで配信中。「一語一歩」で検索を。
毎週木曜16時に新エピソードを配信!
Spotifyはこちら:  https://open.spotify.com/show/4gRXIw1HxACPrFMfI83HKZ?si=27b68eaff0f040c5
<最新エピソード>
#35「予防」~危機感を伝えても、人が動かない時どうしたらいい?
#34「ペルソナ」~勇気をもって対象者を具体像に絞ることで見えてくることとは?
#33「欲望」~「満たされない」の連鎖に陥らないためには?

◆7◆ 編集後記
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スタッフの渡邉です。能登半島に来て、はや3週間ほど経ちました。
データでは見えて来ない被災の現場を見学したり、能登らしい復興に向けた住民の意見交換会を実施したり、エンパブリックで学んできたことも活かしながら現地のサポートをさせていただいています。
対話や関係づくりって「重要だけど、緊急じゃない」と思われて後回しにされがちです。
しかし、対話の仕方をちゃんと学んだり、ちゃんと関係づくりをすることも、いつかくるかもしれない非常事態や大きな変化の時にこそ力を発揮できるものだな、と改めて考えています。 (渡辺)
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株式会社エンパブリック
メルマガ「根津の街から」
(第238号 2024年3月29日配信)
発行責任者=広石 拓司