根津は東京都文京区の東端にあり、上野公園、東京藝術大学などのある上野の岡と東京大学のある本郷の岡に挟まれた谷にあるまちです。最近は、近隣の谷中、千駄木と併せて、谷中・根津・千駄木から谷根千(やねせん)という名称で親しまれ、下町の面白いお店がたくさんあるエリアとして、テレビや雑誌にも取り上げられることも増えています。
Q 私はエンパブリック訪問で初めて根津に来たのですが・・・
エンパブリックを始めてから、案外、東京や近郊の方でも「根津って、どこですか?」「行ったことがない」という方が多くいらっしゃいます。特に、日頃、渋谷や新宿を拠点にしている方には多いようです。設立後も、根津スタジオのように講座を行う場合、根津は不利な場所ではないか、という意見もいただいたことがあります。
ただ、僕としては、エンパブリックは谷根千で設立し、運営しようと決めていました。
Q どうしてですか?
エンパブリックは、個人の力を引き出し、持ち寄っていくことで、人と人がつながるような場づくりをテーマにし、そこから地域や経済を考え、最終的には新しい市民社会の基盤づくりに貢献していくことをテーマにしています。そのエンパブリックの概念を体感できる空間は根津、谷根千だと思ったからです。
Q エンパブリックの概念を体感・・・ですか?
そうです。先ず、谷根千というのが、谷中、根津、千駄木という3つの地域を集めた名前です。しかも、興味深いのは、谷中は台東区、根津・千駄木は文京区と行政区画を超えたエリアがまとまっていることです。
今の日本で大きな課題の一つが、地域活性化やまちづくりです。それらは、どうしても行政主導での運営であったり、NPOが主催していても行政と一体となって運営している場合が多くあります。しかし、谷根千は二つの区にまたがっていて、しかも文京区と台東区は小選挙区は同じですが、雰囲気が違っていて、連携度は高くない。
だから、谷根千は制度で括られたまちでも、行政主導で進められたまちづくりではなく、住民や訪問者の生活感覚、または住む人の持ち寄りでつくられたまちなんです。
そもそも、谷根千というコンセプトは、25年前に、森まゆみさんたちが、地域情報雑誌「谷中・根津・千駄木(谷根千)」を発刊されたことから始まっています。この雑誌を作る時、どのエリアを対象にしようかと考えたそうです。すると、千駄木あたりに暮らし、自転車を生活で使っている主婦の立場からみると、上野の山を越えて台東区の中心の浅草の方にも行かないし、本郷の山を越えて文京区の春日、小石川方面まで買い物には行かない。谷の中で生活し、生活で必要なことを賄っているのではないか。だから、生活感覚でいうと、谷中と根津・千駄木は一つのエリアだろうという発想から始まったそうです。
Q 生活感覚から、まちができていったということですね。
さらに、地域情報誌「谷根千」は、一般に書店では販売せずに、地元の店先においてもらって販売に協力してもらう販売方法をとりました。編集スタッフが自転車で地元の店に置いていってもらったのです。その地域情報誌を店頭に置くという共通の作業を通じて、それぞれの店舗に店舗の運営者さんもお客さんや住民も、谷根千という概念でつながりが生まれてきた。それが、谷根千というブランドとして定着する第一歩だったのです。
谷根千地域で毎年秋に行われる芸工展は今年で17年目になりますが、これは「まちじゅうが展覧会場」という概念に基づき、まちの人やお店などが、自分の店にアートを展示したり、ワークショップを行ったりします。これも行政や特定団体が仕切るのではなく、それぞれの参加者が自己責任で、店や個人の思いや展示物を持ち寄っていこうというイベントなのです。
また、不忍ブックストリートというイベントも、不忍通り沿いの書店、古書店の連携から始まり、そこからお店も協力して自分の店にある古本をダンボールに入れて店舗も前に出す「一箱古本市」という活動に広がっています。これも、同じ持ち寄りの発想です。
つまり、谷根千というまちは、個人・個店のやりたいこと、持っているものという個の資源を待ち寄ることでできてきたのです。
Q 行政や特定の団体が主導したのではなく、お店や個人からまちができていった訳ですね。まちづくりの意識が高い地域なのでしょうか?
まちづくりへの意識というよりも、個人、個店が自分のことを頑張っていることが、まちを創ったのではないかと、僕は感じています。
例えば、谷根千にはこだわりのお店がお互いに紹介しあっているのも、「まちづくりのため」というよりは、「自分の店に来て下さる方に対して、きちんと対応したい」という思いの結果だと思うのです。
あるこだわり雑貨の店が、お客さんからお勧めの喫茶店を聞かれたとします。こだわり雑貨のことが好きな人だから、きっとコーヒーやカフェにもこだわりがあるはず。だから、そのお客さんへの満足度を上げるために、いいお店を紹介したい。それが結果的に、こだわりのお店同士が紹介しあっているのだと思います。その結果、路地裏のこだわりの店に新しいお客さんがつき、その店が生き残れ、結果、まちの面白さが高まっている。
Q あくまでも、お店は自分の店をやっていくことが中心だと。
もちろん、谷根千という地域ブランドがある効果も感じています。また、生活や仕事をする場がよい空間であって欲しいので、まちを良くしたいという思いも強くあるでしょう。でも、お店がにぎやかなことの基盤としてあるのは、各々の店が自分の大切にする確たるものをベースに、何とか商売を成立させようと店を切り盛りしていることです。
「こだわり」というと、商売や採算を無視していると思われがちですが、逆に商売にこだわっているのです。自分の価値観をベースに、一人で、潤沢な資金を持たずにお店を運営するためには、先ず定期的に来て下さるリピーターの方を大切にしないといけない。そこが弱いと売上げの基盤がなくなってしまう。先ず「自分」、そして「顔の見えるお客様」という「人」が最初にある経営をしています。
Q 谷根千は都心なのに、コンビニなどの全国チェーン店が、あまりないのに驚いたのですが。
それも、まちづくりで反対運動が強いからとかではないのです。このエリアは、震災や戦争で焼かれなかった地域で、お店のスペースとして出るのが5坪とか10坪とか狭い場合も多いのです。全国チェーン店は、利益率を確保するための標準的な運営モデルがありますが、それは郊外や都心の大規模開発を前提としているので、このような小さな土地面積では難しいのです。
つまり、全国チェーンでは運営方法や商品、利益率の設定が店舗間で共通化され、それがブランドの裏打ちとなっています。ただし、店で働く人は入れ替わることが前提となっている。だからマニュアル化を進め、特定の人に依存しないモデルを構築しています。
それに対して、このまちの店の場合、先ず「人」がいて、そこから商品や運営方法ができています。
私は、このまちの経営モデルに、今の日本や世界の経済社会が学ぶべきものが数多くあると思っています。
Q 日本や、世界もですか??
企業の経済文化では、最初に成長が前提となります。自分らしさや人らしさを超えて成長しなければならない。利益のためには経営陣や社員が入れ替わるのも当然です。会社や商品に思い入れのないヘッジファンドや投資家がやってきて、「あなたたちのパフォーマンスが不満だ」というと、折角思い入れをもって開発し、根強いファンのいる商品も利益率が悪いとやめるのも当然だとなってしまいがちです。そこでは、人や思いよりも、利益を生む仕組みの運営効率の方が優先されます。
一方、谷根千の経済モデルは、自分たちの価値観や商品のこだわりがあって、持続可能的に商売をして、持続的にお客さんと価値を分かち合っていくというモデルです。
同じ店舗でも、全国チェーンは前者の「企業の経済」で、こだわりの店は後者の「お店の経済」で動いているのだと思います。
Q 「企業の経済」と「お店の経済」って、違うものなのですか?
例えば、店経済では、生活と仕事が分離していません。つまり、経済活動と、個人のやりたい仕事や暮したい生活が分離していません。
企業に勤めると定年があります。しかし、商店だと、いつまでもやっていけます。80歳でも続けたければ続けられる。勤務時間も自由に設定できます。また、自分の店だと、子どもを保育園に預けなくても、店先で一緒にすごせます。お店に店の子どもがいるのは昔、普通にあった風景ですが、今、全国チェーン店や大型スーパーで、スタッフの子どもがいることはないですよね。
シニア世代のいきがい、ワーク・ライフ・バランスなど社会的課題になっていますが、その解決には、「企業の経済」とは異なる「お店の経済」の思想を持ち込むことが必要なのではないかと思います。
それは、決して経済成長をあきらめよ、時代を逆行せよと言いたいのではないのです。新しい資本主義の中で豊かに成長していくためには、「企業の経済」に「お店の経済」を混ぜていくことが必要だと思います。店の経済も資本主義経済の一つの形です。「企業の経済」か「お店の経済」かといった二者択一ではなく、会社毎に両者を混ぜたモデルを、柔軟に捉え、もっと多様な会社のあり方、働き方、仕事の価値観を模索してもいいと思うのです。それが新しい資本主義を拓くのではないかと思います。
Q 仕事と生活の分離、融合というのは、地域づくりにも関係してきますね。
そうですね。今、地域活性化と言われる時、多くの人が「企業の経済」を前提として考えていると思います。特産品を、どれだけたくさん売れるかといった発想です。商店街の活性化も「企業の経済」の考え方に縛られがちです。そうした動きを完全に否定しないのですが、もっと別なオルターナティブな道があるはずです。
地域社会には、企業の経済、お店の経済、村の文化、家族の文化など複数の考え方、行動指針が多層的に存在しています。
これまで、小さな商店を守っていくことは、大規模店舗やフランチャイズ展開に比較して、不利だ、しんどいと思われてきました。かつては、そうでした。しかし、今の時代、そしてこれからの時代、1つの企業がフランチャイズで50店舗に増やすことは、50人の人がそれぞれの1つの店舗をつくって守っていくことと比較して、全ての面で効果が高いのでしょうか? 人がいきいきと働く、生活と仕事のスタイルを選択できる、多様性によって環境変化への対応力をつけるといった側面の意義は、これから大きくなのではないでしょうか。
Q しかし、効率という点では、大企業型の方がいいのでは?
確かに、50店舗がバラバラに動いていたら、効率は悪いですね。ですから、私たちは、「クラスター」という発想を重視しています。
谷根千は、個々には小さな事業が持ち寄り、つながり、紹介し合う、共通インフラとしてのイベントを持つといったことを通して、谷根千という地域ブランドや魅力をつくっています。だから、谷根千に行けば何かこだわりのものがあるんじゃないかと思わせることができて、ますます町の魅力がアップします。また、新しく店をやろうと考えている人も、この町ならやっていけそうと思って自然と人が集り、ということの繰り返しによって、まちの魅力が高まってきています。
先ほどの問いに戻ると、50店舗がバラバラに動くのではなく、50店舗のそれぞれ(個)ができることや魅力を持ち寄り、全体としての相乗効果として新しい価値が生まれ、それが個も全体も豊かにしていくように、地域のつながりを生み出していくこと。つまり、地域のバリューチェーンに基づくクラスターづくりを進めていくことができれば、50店舗の開発、運営の全体コストを抑えながら、フランチャイズではできない地域独自の魅力を生み出すことができるでしょう。
Q 谷根千をモデルとして、エンパブリックとしてはどのようなことをしていきたいのでしょうか。
エンパブリックが「市民社会のバリューチェーンをプロデュースする」と言っているのは、行政やまちづくりプロデューサーがまちづくりを進めるのを超えて、谷根千のように個がバリューチェーンによってつながる地域をつくっていくノウハウと手法を開発し、提供しています。
中でも、個々人が自分が社会とつながり、新しい価値を生み出していくための活動(サークルをつくる、自分で店をやる、起業する)などをサポートし、それら小さな自分のための活動が個々で動くだけでなく、つながり、クラスターを生み出すためのコーディネーターの育成、プログラム・デザインなどに取り組んでいます。
エンパブリック根津スタジオでは、場づくりやコーディネーター育成のためのトレーニングプログラムを提供しているので、ぜひ、お気軽に根津スタジオに足をお運びください。
そして、根津スタジオにお越しの際には、谷根千のまちを散策してみてください。谷根千の空気を感じとっていただき、皆様の今後の仕事や生活を考える一助にしていただければと思っています。
【2015/07/28】縁パブ「これからの地域に役立つ公共施設とは?」
/カテゴリ: ばづくーるスクール, 縁パブ, 開催情報/作成者: empublic事務局図書館、美術館、公民館、地域センターなどの公共施設に地域から期待される役割が変化しています。
いったい、これからの時代、地域住民にとって、地域づくりにとって本当に役に立つ公共施設とは、どのようなものなのか、共に考えましょう。
近年、公共施設が新しい動きを始めています。
図書館でビブリオ・バトル(書評合戦)やコミュニケーション・ワークショップなどを開催したり、東京都美術館で市民が美術館を舞台に企画をつくる「とびらプロジェクト」が始まったり、図書館や市民活動センターなど複数の機能が一体となった「武蔵野プレイス」が登場したり、静的な公共施設のイメージを打ち破る、新しさや動きを感じる活動が、全国あちらこちらで始まってきています。
これらの動きは、参加型まちづくりや市民主体の活動が重視される中で、地域住民が求めている場の変化、公共施設に期待する機能が変化してきていたためだと考えられます。ただし、新しい活動や施設が増える一方で、財政の厳しい中、公共施設を運営する費用は、どうあるべきなのか。本当に市民に役立つ機能を果たしているのか、といった意見もあります。
果たして、これからの社会において、公共施設に求められることは何なのでしょうか?
そして、本当に地域に役立つ公共施とは、どのような施設なのでしょうか? 対話を通して、共に考えましょう!
ナビゲーターの小林勇樹さんは、墨田区の「みどりコミュニティセンター」(http://www.midori-cc.jp/)の指定管理者の社員として、施設で行う講座やイベントの企画・実施を担当しています。施設が地域の人にとって「使える場」となるために、新しい企画屋地域活動団体との連携などの工夫も進めています。
その仕事の中で日々考えているのが、「地域に役立つ公共施設のありかたって何だろう?」ということです。
住民や社会のニーズが変化し、公共施設にも新しい動きが出ている中、「良い地域センターとは?」「地域センターの企画が担うべきことは?」から始まり、これからの社会で地域も、住民も、施設運営者も、行政も、誰もが幸せになる公共施設とは何か?という考えにいたっています。
良い公共施設って何?と、そもそもに立ち返って、改めて一緒に考えてみませんか?
公共施設の指定管理関係の方はもちろん、生涯学習やスポーツ、文化振興の担当の職員の方、施設登録団体やサークルの代表として施設をよく利用している方などが集まって、公共施設のこれからのありかたを一緒に考えたいと思います!
【日時】2015年7月28日(火)19:30~22:00
【ファシリテーター】広石拓司
【ナビゲーター】小林勇樹さん(アズビル株式会社 みどりコミュニティセンター自主事業責任者)
【定員】8名
【参加費】2,000円
【会場】 根津スタジオ
【プログラム】
1.ナビゲータートーク 小林勇樹さん
2.対話 縁パブ「地域に役立つ公共施設とは?」
3.解説 「縁パブとは〜自分のための対話の場のつくりかた」
◆オープニングクエスチョン「住民・利用者として良かった公共施設って?それは、なぜ?」
この問いからお互いの考えの共通項と違いを発見し、新しい問いを生み出しながら、対話を展開していきます!
■縁パブとは?
「他の人はどんな風に考えているんだろう?」と思ったら「縁パブ」を!
日常生活でのふとした疑問から生まれたテーマについて、様々な背景をもつ人たちと意見交換を楽しむ対話のプログラムです。初対面同士でもフラットな関係をつくりながら、短時間で深い対話ができます。地域での対話の場をひらく際の、プログラムの参考にぜひ体験してみてください。
「府中市民活動コーディネーター養成講座」を弊社スタッフ松井が担当しました。
/カテゴリ: レポート, 講演等の実績/作成者: empublic事務局「府中市民活動コーディネーター養成講座」を弊社スタッフ松井が担当しました。
■開催日:2015年6月20・27日、7月4日
■主催:府中NPO・ボランティア活動センター
■イベント:府中市民活動コーディネーター養成講座
■URL:https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kurashi/machi/dantai/cordinatoryosei.files/chirashi.pdf
■テーマ:まちあるきで府中の宝物発見!
■対象:同市内団体、NPOスタッフ
まちあるきの企画、実施を体験することで地域コーディネーターに必要な力を身につける3回連続の講座です。1日目はKJ法を使って話し合うファシリテーションの実践、2日目はファシリテーションのコツを活用してまちあるきを企画し、実際に府中駅周辺でまちあるきを行いました。3日目は、1日目と2日目のふりかえりを行いながら、ファシリテーターの役割について学びました。受講生は皆、同じ府中市に住みながらもそれぞれが違う視点を持っています。自分たちの住む街を歩き、話し合い、一人ひとりの持つ経験と背景の違いを知ることで、地域の魅力を再発見する地域コーディネーターに必要な考え方を学びました。
「一般社団法人サイエンス・メディア・センター」勉強会にスタッフ矢部が登壇しました。
/カテゴリ: レポート, 講演等の実績/作成者: 矢部 純代「一般社団法人サイエンス・メディア・センター」勉強会に弊社スタッフ矢部が登壇しました。
Rikejoの活動について、メディアにおけるジェンダー論を検討される勉強会の中でお話させていただきました。
「リケジョ」というセグメント化した呼称やその活動に対して差別的だといった見解はあります。しかし、圧倒的に理系女性が少ない現代社会においてあえて「リケジョ」と際立たせること、特異的にサポートしていくことの効果は大きいといえます。これは、女性活躍推進の中での様々な施策である「ポジティブアクション」が差別的であるかといった問題と同じです。こうした活動や思索を進めていく中で、真に男女関係なく実力の発揮できる社会、理系を選択できる社会になることを目指し、いつの日がそういった呼称や施策がなくなるようにすればよいだけのこと。
現場では日々、そのための試行錯誤が進められているのです。
■開催日:2015年3月
■主催:一般社団法人サイエンス・メディア・センター(早稲田大学内)
■イベント:同センター勉強会
■テーマ:ジェンダー的視点から見た Rikejoの活動について
■対象:同センター会員
「墨田区いっしょにネッと交流会」にスタッフ松井が登壇しました。
/カテゴリ: レポート, 講演等の実績/作成者: empublic事務局「墨田区いっしょにネッと交流会」に弊社スタッフ松井が登壇しました。
■開催日:2015年
■主催:墨田区役所区民活動推進課
■イベント:墨田区いっしょにネッと交流会
■テーマ:今日はとことん、マッチング!
■対象:同区内団体スタッフ
墨田区の地域活動団体が登録している地域応援ウェブサイト「いっしょにネッと」。この交流会では、ネット上の交流だけではなく、顔の見えるお付き合いによりネットワークを広げよう、まちの活性化につなげようという趣旨で開催されました。ゲストトークに加え、できるだけ多くの方との交流が行えるよう、「みんなで考えよう! 地域活動の次の一手」をテーマに、具体的に以下の4つについてカフェ型トークを行いました。
1. 地域でどんなマッチングが必要か?
2. 仲間を増やすには?
3. 人の集まるイベントのつくり方は?
4. みんなの協力を引き出す運営とは?
「川崎市多摩区市民活動スキルアップ研修」をスタッフ松井が担当しました。
/カテゴリ: レポート, 講演等の実績/作成者: empublic事務局「川崎市多摩区市民活動スキルアップ研修」を弊社スタッフ松井が担当しました。
■開催日:2015年2月19日
■主催:川崎市多摩区役所生涯学習支援課
■イベント:川崎市多摩区市民活動スキルアップ研修
■テーマ:市民活動を発展させる4つのポイント
■対象:同区内団体スタッフ
この講座では、多摩区で既に活動を行っている方々が、市民活動を発展させるポイントとして以下の4つに絞り、学びました。
1. 地域に眠っている資源を見つけ出す
2. 分野を横断して組む
3. 一人の強いリーダーに頼らない
4. 口コミを増やすことを意識する
講座の最後には、4つのポイントについてチェックシートを使って活動の現状を確認し、「その現状を踏まえて具体的に何をするか」について話し合いを行いました。
フジサンケイビジネスアイ コラボ企画「理系女性リーダーから学ぶ30までにやるべきこと~仕事も生活もあきらめないタイムマネジメント講座」開催しました!
/カテゴリ: レポート, 講演等の実績/作成者: 矢部 純代仕事も生活もあきらめないライフスタイルが理想。アンケート調査(※株式会社三菱総合研究所「女性の働き方に関するアンケート」2014年)によると、7割以上の女性が仕事も生活もあきらめないライフスタイルにしたいとしています。しかし、現実的には「仕事に追われる」「仕事の意義がわからなくなる」、またはライフステージによっては仕事が思うようにできないなど、とまどうことが多いようです。
こうした悩みを抱える20代女性向けに、連続講座「「仕事も生活もあきらめないタイムマネジメント講座を開催しました。
本講座では、業種も多様な、企業において専門性を活かして活躍しつつさらにマネジメント分野でも活躍している5人の理系女性リーダーからお話いただきました。
5名のリーダーの方が自ら実践してきた5通りのタイムマネジメントのノウハウについて学びつつ、20代の女性が目指すべきロールモデルとして、その仕事や生き方に対する考え方も学ぶことができました。身近にロールモデルがいないということも20代女性の悩みの一つでもありますが、プログラムに参加することで、こうした理系女性リーダーや同年代の女性同士のネットワーキングもできました。
当日の様子はこちらをご覧ください。
【ご登壇いただいた講師の皆様】
なぜエンパブリックは根津にあるのか?
/カテゴリ: ニュース・お知らせ/作成者: empublic事務局代表 広石へのインタビュー (2009年5月) PDF
Q エンパブリックは、東京の下町「根津」に拠点を構えています。先ず、根津のまちについて紹介してください。
根津は東京都文京区の東端にあり、上野公園、東京藝術大学などのある上野の岡と東京大学のある本郷の岡に挟まれた谷にあるまちです。最近は、近隣の谷中、千駄木と併せて、谷中・根津・千駄木から谷根千(やねせん)という名称で親しまれ、下町の面白いお店がたくさんあるエリアとして、テレビや雑誌にも取り上げられることも増えています。
Q 私はエンパブリック訪問で初めて根津に来たのですが・・・
エンパブリックを始めてから、案外、東京や近郊の方でも「根津って、どこですか?」「行ったことがない」という方が多くいらっしゃいます。特に、日頃、渋谷や新宿を拠点にしている方には多いようです。設立後も、根津スタジオのように講座を行う場合、根津は不利な場所ではないか、という意見もいただいたことがあります。
ただ、僕としては、エンパブリックは谷根千で設立し、運営しようと決めていました。
Q どうしてですか?
エンパブリックは、個人の力を引き出し、持ち寄っていくことで、人と人がつながるような場づくりをテーマにし、そこから地域や経済を考え、最終的には新しい市民社会の基盤づくりに貢献していくことをテーマにしています。そのエンパブリックの概念を体感できる空間は根津、谷根千だと思ったからです。
Q エンパブリックの概念を体感・・・ですか?
そうです。先ず、谷根千というのが、谷中、根津、千駄木という3つの地域を集めた名前です。しかも、興味深いのは、谷中は台東区、根津・千駄木は文京区と行政区画を超えたエリアがまとまっていることです。
今の日本で大きな課題の一つが、地域活性化やまちづくりです。それらは、どうしても行政主導での運営であったり、NPOが主催していても行政と一体となって運営している場合が多くあります。しかし、谷根千は二つの区にまたがっていて、しかも文京区と台東区は小選挙区は同じですが、雰囲気が違っていて、連携度は高くない。
だから、谷根千は制度で括られたまちでも、行政主導で進められたまちづくりではなく、住民や訪問者の生活感覚、または住む人の持ち寄りでつくられたまちなんです。
そもそも、谷根千というコンセプトは、25年前に、森まゆみさんたちが、地域情報雑誌「谷中・根津・千駄木(谷根千)」を発刊されたことから始まっています。この雑誌を作る時、どのエリアを対象にしようかと考えたそうです。すると、千駄木あたりに暮らし、自転車を生活で使っている主婦の立場からみると、上野の山を越えて台東区の中心の浅草の方にも行かないし、本郷の山を越えて文京区の春日、小石川方面まで買い物には行かない。谷の中で生活し、生活で必要なことを賄っているのではないか。だから、生活感覚でいうと、谷中と根津・千駄木は一つのエリアだろうという発想から始まったそうです。
Q 生活感覚から、まちができていったということですね。
さらに、地域情報誌「谷根千」は、一般に書店では販売せずに、地元の店先においてもらって販売に協力してもらう販売方法をとりました。編集スタッフが自転車で地元の店に置いていってもらったのです。その地域情報誌を店頭に置くという共通の作業を通じて、それぞれの店舗に店舗の運営者さんもお客さんや住民も、谷根千という概念でつながりが生まれてきた。それが、谷根千というブランドとして定着する第一歩だったのです。
谷根千地域で毎年秋に行われる芸工展は今年で17年目になりますが、これは「まちじゅうが展覧会場」という概念に基づき、まちの人やお店などが、自分の店にアートを展示したり、ワークショップを行ったりします。これも行政や特定団体が仕切るのではなく、それぞれの参加者が自己責任で、店や個人の思いや展示物を持ち寄っていこうというイベントなのです。
また、不忍ブックストリートというイベントも、不忍通り沿いの書店、古書店の連携から始まり、そこからお店も協力して自分の店にある古本をダンボールに入れて店舗も前に出す「一箱古本市」という活動に広がっています。これも、同じ持ち寄りの発想です。
つまり、谷根千というまちは、個人・個店のやりたいこと、持っているものという個の資源を待ち寄ることでできてきたのです。
Q 行政や特定の団体が主導したのではなく、お店や個人からまちができていった訳ですね。まちづくりの意識が高い地域なのでしょうか?
まちづくりへの意識というよりも、個人、個店が自分のことを頑張っていることが、まちを創ったのではないかと、僕は感じています。
例えば、谷根千にはこだわりのお店がお互いに紹介しあっているのも、「まちづくりのため」というよりは、「自分の店に来て下さる方に対して、きちんと対応したい」という思いの結果だと思うのです。
あるこだわり雑貨の店が、お客さんからお勧めの喫茶店を聞かれたとします。こだわり雑貨のことが好きな人だから、きっとコーヒーやカフェにもこだわりがあるはず。だから、そのお客さんへの満足度を上げるために、いいお店を紹介したい。それが結果的に、こだわりのお店同士が紹介しあっているのだと思います。その結果、路地裏のこだわりの店に新しいお客さんがつき、その店が生き残れ、結果、まちの面白さが高まっている。
Q あくまでも、お店は自分の店をやっていくことが中心だと。
もちろん、谷根千という地域ブランドがある効果も感じています。また、生活や仕事をする場がよい空間であって欲しいので、まちを良くしたいという思いも強くあるでしょう。でも、お店がにぎやかなことの基盤としてあるのは、各々の店が自分の大切にする確たるものをベースに、何とか商売を成立させようと店を切り盛りしていることです。
「こだわり」というと、商売や採算を無視していると思われがちですが、逆に商売にこだわっているのです。自分の価値観をベースに、一人で、潤沢な資金を持たずにお店を運営するためには、先ず定期的に来て下さるリピーターの方を大切にしないといけない。そこが弱いと売上げの基盤がなくなってしまう。先ず「自分」、そして「顔の見えるお客様」という「人」が最初にある経営をしています。
Q 谷根千は都心なのに、コンビニなどの全国チェーン店が、あまりないのに驚いたのですが。
それも、まちづくりで反対運動が強いからとかではないのです。このエリアは、震災や戦争で焼かれなかった地域で、お店のスペースとして出るのが5坪とか10坪とか狭い場合も多いのです。全国チェーン店は、利益率を確保するための標準的な運営モデルがありますが、それは郊外や都心の大規模開発を前提としているので、このような小さな土地面積では難しいのです。
つまり、全国チェーンでは運営方法や商品、利益率の設定が店舗間で共通化され、それがブランドの裏打ちとなっています。ただし、店で働く人は入れ替わることが前提となっている。だからマニュアル化を進め、特定の人に依存しないモデルを構築しています。
それに対して、このまちの店の場合、先ず「人」がいて、そこから商品や運営方法ができています。
私は、このまちの経営モデルに、今の日本や世界の経済社会が学ぶべきものが数多くあると思っています。
Q 日本や、世界もですか??
企業の経済文化では、最初に成長が前提となります。自分らしさや人らしさを超えて成長しなければならない。利益のためには経営陣や社員が入れ替わるのも当然です。会社や商品に思い入れのないヘッジファンドや投資家がやってきて、「あなたたちのパフォーマンスが不満だ」というと、折角思い入れをもって開発し、根強いファンのいる商品も利益率が悪いとやめるのも当然だとなってしまいがちです。そこでは、人や思いよりも、利益を生む仕組みの運営効率の方が優先されます。
一方、谷根千の経済モデルは、自分たちの価値観や商品のこだわりがあって、持続可能的に商売をして、持続的にお客さんと価値を分かち合っていくというモデルです。
同じ店舗でも、全国チェーンは前者の「企業の経済」で、こだわりの店は後者の「お店の経済」で動いているのだと思います。
Q 「企業の経済」と「お店の経済」って、違うものなのですか?
例えば、店経済では、生活と仕事が分離していません。つまり、経済活動と、個人のやりたい仕事や暮したい生活が分離していません。
企業に勤めると定年があります。しかし、商店だと、いつまでもやっていけます。80歳でも続けたければ続けられる。勤務時間も自由に設定できます。また、自分の店だと、子どもを保育園に預けなくても、店先で一緒にすごせます。お店に店の子どもがいるのは昔、普通にあった風景ですが、今、全国チェーン店や大型スーパーで、スタッフの子どもがいることはないですよね。
シニア世代のいきがい、ワーク・ライフ・バランスなど社会的課題になっていますが、その解決には、「企業の経済」とは異なる「お店の経済」の思想を持ち込むことが必要なのではないかと思います。
それは、決して経済成長をあきらめよ、時代を逆行せよと言いたいのではないのです。新しい資本主義の中で豊かに成長していくためには、「企業の経済」に「お店の経済」を混ぜていくことが必要だと思います。店の経済も資本主義経済の一つの形です。「企業の経済」か「お店の経済」かといった二者択一ではなく、会社毎に両者を混ぜたモデルを、柔軟に捉え、もっと多様な会社のあり方、働き方、仕事の価値観を模索してもいいと思うのです。それが新しい資本主義を拓くのではないかと思います。
Q 仕事と生活の分離、融合というのは、地域づくりにも関係してきますね。
そうですね。今、地域活性化と言われる時、多くの人が「企業の経済」を前提として考えていると思います。特産品を、どれだけたくさん売れるかといった発想です。商店街の活性化も「企業の経済」の考え方に縛られがちです。そうした動きを完全に否定しないのですが、もっと別なオルターナティブな道があるはずです。
地域社会には、企業の経済、お店の経済、村の文化、家族の文化など複数の考え方、行動指針が多層的に存在しています。
これまで、小さな商店を守っていくことは、大規模店舗やフランチャイズ展開に比較して、不利だ、しんどいと思われてきました。かつては、そうでした。しかし、今の時代、そしてこれからの時代、1つの企業がフランチャイズで50店舗に増やすことは、50人の人がそれぞれの1つの店舗をつくって守っていくことと比較して、全ての面で効果が高いのでしょうか? 人がいきいきと働く、生活と仕事のスタイルを選択できる、多様性によって環境変化への対応力をつけるといった側面の意義は、これから大きくなのではないでしょうか。
Q しかし、効率という点では、大企業型の方がいいのでは?
確かに、50店舗がバラバラに動いていたら、効率は悪いですね。ですから、私たちは、「クラスター」という発想を重視しています。
谷根千は、個々には小さな事業が持ち寄り、つながり、紹介し合う、共通インフラとしてのイベントを持つといったことを通して、谷根千という地域ブランドや魅力をつくっています。だから、谷根千に行けば何かこだわりのものがあるんじゃないかと思わせることができて、ますます町の魅力がアップします。また、新しく店をやろうと考えている人も、この町ならやっていけそうと思って自然と人が集り、ということの繰り返しによって、まちの魅力が高まってきています。
先ほどの問いに戻ると、50店舗がバラバラに動くのではなく、50店舗のそれぞれ(個)ができることや魅力を持ち寄り、全体としての相乗効果として新しい価値が生まれ、それが個も全体も豊かにしていくように、地域のつながりを生み出していくこと。つまり、地域のバリューチェーンに基づくクラスターづくりを進めていくことができれば、50店舗の開発、運営の全体コストを抑えながら、フランチャイズではできない地域独自の魅力を生み出すことができるでしょう。
Q 谷根千をモデルとして、エンパブリックとしてはどのようなことをしていきたいのでしょうか。
エンパブリックが「市民社会のバリューチェーンをプロデュースする」と言っているのは、行政やまちづくりプロデューサーがまちづくりを進めるのを超えて、谷根千のように個がバリューチェーンによってつながる地域をつくっていくノウハウと手法を開発し、提供しています。
中でも、個々人が自分が社会とつながり、新しい価値を生み出していくための活動(サークルをつくる、自分で店をやる、起業する)などをサポートし、それら小さな自分のための活動が個々で動くだけでなく、つながり、クラスターを生み出すためのコーディネーターの育成、プログラム・デザインなどに取り組んでいます。
エンパブリック根津スタジオでは、場づくりやコーディネーター育成のためのトレーニングプログラムを提供しているので、ぜひ、お気軽に根津スタジオに足をお運びください。
そして、根津スタジオにお越しの際には、谷根千のまちを散策してみてください。谷根千の空気を感じとっていただき、皆様の今後の仕事や生活を考える一助にしていただければと思っています。
エンパブリック設立のストーリー
/カテゴリ: ニュース・お知らせ/作成者: empublic事務局エンパブリックは2008年5月に、「市民社会のバリューチェーンのプロデュース」を掲げて設立されました。
人は、もっと誰かのために役立ちたい、幸せになりたい、自分自身を活かしたいという気持ちを持っています。こうした気持ちと自分の中にある資源をだれかと分かち合う場が世の中に増えてくことで、いい相互刺激や相互支援ができると考えます。
さらに、こうした場が場とつながっていけば、クラスターとなり社会に新たな潮流を生むことができます。これらのステップを通じて、個人も社会も会社も、より手応えのある人生を歩んでいただきたい。
私たちは個人と全体のWIN-WINの関係づくりに役立ちたいのです。
「エンパブリック(empublic)」という言葉は、プライベートで持っている思いや知恵や資源を、少しパブリック化して、分かちあったり、持ち寄ったりすることで、人々のライフスタイルをシフトすることを意味しています。
現代社会においては社会環境や経済の変化がめまぐるしく、一人の力では対応できない問題も多いかもしれません。しかし、個々人の中には、職場や地域において、他の人と力を出し合うことで、クリエイティブな力を生み出す力があると信じています。
個人と企業、個人と社会が同時に幸せになる社会、それはきっと実現できる。そのために、お役に立つ商品・サービスを開発し、より多くの方に使っていただけるよう提供していきたいと考えています。
2008年 株式会社エンパブリック代表 広石 拓司
代表の広石は、薬学部大学院を修了後、大手シンクタンクで医療経営のプロジェクトに携わっていました。そこで、医療という人の生活を支え、人に最もフォーカスされているべきサービスで、利用者不在のサービスになっていることに懸念を感じたのです。もっと一般の人や現場の人が中心となって、新しい医療や福祉を始めとする社会サービスを生み出していけるのではと考え、96年、社内にED!SON(市民生活室)を立ち上げ、新しい市民社会づくりに役立つサービスの模索を始めました。
同時に、アメリカやヨーロッパでNPOのリーダーたちに出会います。彼らは若く、きれいなオフィスで、自分たちが社会を良くすると堂々と語り、事業として成長させようとしています。その姿を見て、日本になんとか紹介し、導入したいと考えて、試行錯誤を続けていました。
そんな中、2001年にETIC.代表の宮城治男さんや井上英之さんと出会い、社会起業家というコンセプトを紹介されたことを機に、ETIC.との活動が始まりました。
ETIC.の周りには社会起業家を志す人たちがたくさん集まっていました。そして彼らは口をそろえて「前例のないことに挑みたい」と言います。この時、社会は大きいところで変化していくのではなく、リスクを負い、失敗からも学べる挑戦者たちのように、前へ動こうとするところから動いていくのだと気付かされました。そして、彼らに自分が得てきた社会や経営、事業発想のノウハウを伝え、彼らの実現したい夢を形にすることを共に考えるために「社会起業精神ワークショップ」を02年に始めました。それから7年、ワークショップは20を超える地域で50回以上開催され、受講者は1500人を超えています。会社員だった自分がETIC.や地域の現場にどんどんと入っていけたのは、ワークショップがあったからです。
06年には「好きなまちで仕事を創る」の制作に編集長として参加し、その後、チャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを通して数多くの地方都市から商店街、農村まで多くの地域の現場での仕事に携わることができています。さらに、社会起業家というコンセプトを通して、欧米、中国、韓国の魅力的な人たちとたくさん出会うこともできました。
このように社会起業家の立ち上げやプロジェクトの支援を続ける中で、ずっと一つの疑問がありました。「なぜ日本のNPOや社会起業家は欧米のように大きくなれないのか?」。
最初に出会ってから10年の間に、アメリカではNPOや社会起業家には10億円を超える団体が続々と登場し、社会的影響力も大きいメジャーな存在としてホワイトハウスも無視できない存在となっています。欧米では、社会起業とは新しいルールある市場をつくるものという認識も広がっているのに、日本では依然として、いいことしているけど、小さい活動というイメージのままです。
活動を育成する立場の者として、何が足りないのか、日米で何が大きな違いを生んでいるのか、あらゆる可能性を考え続けました。 そして最終的に気付いた最大のポイントは、
「日本人には、バーベキューの経験が足りない」ということです。
欧米の人は子どものころからホームパーティをしたり、BBQをしたりして、新しい人とつながるイベントを主宰する経験を積んでいます。学校でも、ワークショップ型の授業や、クラブ活動のための地域からの募金集めやチケット販売などが盛んに行われています。誰もが「人が集る場を自ら運営する」という経験値を自然に高めています。それに対して、日本の若い世代は、小中高と教えられる授業を中心にし、チケット販売や多世代がつながる場の主宰をあまり経験していません。そんな経験値が弱いまま、いきなり地域の様々な関係者の力を集め、一つに束ねていく社会起業をしようとしても、うまくいかないのです。
日本と欧米の若者に志の高さや事業計画立案力に差はありません。しかし、実際に現場で、ワークショップ、勉強会、イベント、ボランタリーな組織の運営などをやってみて、うまくいかないと苦労する人が多いのです。参加者を募るにも、寄付を集めるにも、場づくりや運営の経験値がなければ、概念を実現させることはできません。また、人が新しい場に集まっても、どう動けばいいか、何をどう手伝えばいいか、直感的にわからないので指示待ちになります。そこが欧米と比べると圧倒的に足りない以上、欧米のNPOや企業に勝てないのです。
それは地域やNPOだけでなく、企業でも同じ課題があります。グローバル対応が進む中で、かつて日本企業にあったコミュニティは失われ、職場の人間関係作りに悩んだり、精神的に追い詰められる人が増えています。社会や制度から「場」が忘れられ、人々の間から「場づくりの経験値」が失われてしまっているのです。
こうして、日本の市民社会を充実させていくためには、幼少からの個人の経験として足りていない「場」と「場づくり」の経験を意図的に重ねることが必要不可欠だという結論に至ったのです。
しかし、場づくりの経験値を高めるといっても、単に経験するだけでは時間がかかります。経験値の少ない人もやろうと思え、そして現場で加速化度的にステップアップできなければならない。
多くの現場で、多くの人がこのような場づくりを求めています。
一人でも多く人が豊かな場づくり経験を重ねられるように、場づくりのスキル化、ノウハウ化を進め、サービス、商品として皆様に提供し、場づくりをサポートするインフラが必要と考え、共感した仲間たちと共に、エンパブリックを設立することになりました。
エンパブリックは、場づくりノウハウが多くの現場で使われるよう普及することに徹底的にこだわって、新しいサービス、商品の開発と提供に取り組んでいます。