エンパブリック設立のストーリー

エンパブリックは2008年5月に、「市民社会のバリューチェーンのプロデュース」を掲げて設立されました。
人は、もっと誰かのために役立ちたい、幸せになりたい、自分自身を活かしたいという気持ちを持っています。こうした気持ちと自分の中にある資源をだれかと分かち合う場が世の中に増えてくことで、いい相互刺激や相互支援ができると考えます。

さらに、こうした場が場とつながっていけば、クラスターとなり社会に新たな潮流を生むことができます。これらのステップを通じて、個人も社会も会社も、より手応えのある人生を歩んでいただきたい。

私たちは個人と全体のWIN-WINの関係づくりに役立ちたいのです。

「エンパブリック(empublic)」という言葉は、プライベートで持っている思いや知恵や資源を、少しパブリック化して、分かちあったり、持ち寄ったりすることで、人々のライフスタイルをシフトすることを意味しています。
現代社会においては社会環境や経済の変化がめまぐるしく、一人の力では対応できない問題も多いかもしれません。しかし、個々人の中には、職場や地域において、他の人と力を出し合うことで、クリエイティブな力を生み出す力があると信じています。

個人と企業、個人と社会が同時に幸せになる社会、それはきっと実現できる。そのために、お役に立つ商品・サービスを開発し、より多くの方に使っていただけるよう提供していきたいと考えています。

2008年 株式会社エンパブリック代表   広石 拓司

代表の広石は、薬学部大学院を修了後、大手シンクタンクで医療経営のプロジェクトに携わっていました。そこで、医療という人の生活を支え、人に最もフォーカスされているべきサービスで、利用者不在のサービスになっていることに懸念を感じたのです。もっと一般の人や現場の人が中心となって、新しい医療や福祉を始めとする社会サービスを生み出していけるのではと考え、96年、社内にED!SON(市民生活室)を立ち上げ、新しい市民社会づくりに役立つサービスの模索を始めました。
同時に、アメリカやヨーロッパでNPOのリーダーたちに出会います。彼らは若く、きれいなオフィスで、自分たちが社会を良くすると堂々と語り、事業として成長させようとしています。その姿を見て、日本になんとか紹介し、導入したいと考えて、試行錯誤を続けていました。

そんな中、2001年にETIC.代表の宮城治男さんや井上英之さんと出会い、社会起業家というコンセプトを紹介されたことを機に、ETIC.との活動が始まりました。
ETIC.の周りには社会起業家を志す人たちがたくさん集まっていました。そして彼らは口をそろえて「前例のないことに挑みたい」と言います。この時、社会は大きいところで変化していくのではなく、リスクを負い、失敗からも学べる挑戦者たちのように、前へ動こうとするところから動いていくのだと気付かされました。そして、彼らに自分が得てきた社会や経営、事業発想のノウハウを伝え、彼らの実現したい夢を形にすることを共に考えるために「社会起業精神ワークショップ」を02年に始めました。それから7年、ワークショップは20を超える地域で50回以上開催され、受講者は1500人を超えています。会社員だった自分がETIC.や地域の現場にどんどんと入っていけたのは、ワークショップがあったからです。
06年には「好きなまちで仕事を創る」の制作に編集長として参加し、その後、チャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを通して数多くの地方都市から商店街、農村まで多くの地域の現場での仕事に携わることができています。さらに、社会起業家というコンセプトを通して、欧米、中国、韓国の魅力的な人たちとたくさん出会うこともできました。

このように社会起業家の立ち上げやプロジェクトの支援を続ける中で、ずっと一つの疑問がありました。「なぜ日本のNPOや社会起業家は欧米のように大きくなれないのか?」。
最初に出会ってから10年の間に、アメリカではNPOや社会起業家には10億円を超える団体が続々と登場し、社会的影響力も大きいメジャーな存在としてホワイトハウスも無視できない存在となっています。欧米では、社会起業とは新しいルールある市場をつくるものという認識も広がっているのに、日本では依然として、いいことしているけど、小さい活動というイメージのままです。
活動を育成する立場の者として、何が足りないのか、日米で何が大きな違いを生んでいるのか、あらゆる可能性を考え続けました。  そして最終的に気付いた最大のポイントは、
「日本人には、バーベキューの経験が足りない」ということです。
欧米の人は子どものころからホームパーティをしたり、BBQをしたりして、新しい人とつながるイベントを主宰する経験を積んでいます。学校でも、ワークショップ型の授業や、クラブ活動のための地域からの募金集めやチケット販売などが盛んに行われています。誰もが「人が集る場を自ら運営する」という経験値を自然に高めています。それに対して、日本の若い世代は、小中高と教えられる授業を中心にし、チケット販売や多世代がつながる場の主宰をあまり経験していません。そんな経験値が弱いまま、いきなり地域の様々な関係者の力を集め、一つに束ねていく社会起業をしようとしても、うまくいかないのです。
日本と欧米の若者に志の高さや事業計画立案力に差はありません。しかし、実際に現場で、ワークショップ、勉強会、イベント、ボランタリーな組織の運営などをやってみて、うまくいかないと苦労する人が多いのです。参加者を募るにも、寄付を集めるにも、場づくりや運営の経験値がなければ、概念を実現させることはできません。また、人が新しい場に集まっても、どう動けばいいか、何をどう手伝えばいいか、直感的にわからないので指示待ちになります。そこが欧米と比べると圧倒的に足りない以上、欧米のNPOや企業に勝てないのです。

それは地域やNPOだけでなく、企業でも同じ課題があります。グローバル対応が進む中で、かつて日本企業にあったコミュニティは失われ、職場の人間関係作りに悩んだり、精神的に追い詰められる人が増えています。社会や制度から「場」が忘れられ、人々の間から「場づくりの経験値」が失われてしまっているのです。

こうして、日本の市民社会を充実させていくためには、幼少からの個人の経験として足りていない「場」と「場づくり」の経験を意図的に重ねることが必要不可欠だという結論に至ったのです。
しかし、場づくりの経験値を高めるといっても、単に経験するだけでは時間がかかります。経験値の少ない人もやろうと思え、そして現場で加速化度的にステップアップできなければならない。

多くの現場で、多くの人がこのような場づくりを求めています。

一人でも多く人が豊かな場づくり経験を重ねられるように、場づくりのスキル化、ノウハウ化を進め、サービス、商品として皆様に提供し、場づくりをサポートするインフラが必要と考え、共感した仲間たちと共に、エンパブリックを設立することになりました。

エンパブリックは、場づくりノウハウが多くの現場で使われるよう普及することに徹底的にこだわって、新しいサービス、商品の開発と提供に取り組んでいます。