あらかわヘルシータウン・クリエイティ部 第5回(2015年12月21日)レポート

障がい者が地域への参画は、まだまだ実現していない部分もあります。特に、知的障がいの方と地域のつながりは、どのように進めていくといいか、荒川のぞみ園の粂川さんからお話を伺い、障がい者の地域参加の課題を話し合いました。

#5 障がい者から考えるヘルシータウン

障がい者が参画できる街をつくるには?

粂川和子さん(荒川のぞみの会)のお話と質疑から

  • 介護・認知症は、明日は我が身、わが家族と呼びかけることができるが、障碍者の問題は、明日は我が身とは捉えにくい
  • 障碍者に関わると一言で言っても、どんな障害、どんなライフステージに関わるのか、どのような場所で関わるのかによって大きな違いがあることを理解してほしい。
    • 難しさは障がいの重い軽いだけでは決まらない。軽い障害で一緒に仕事をしていると、その分、ナイーブな難しさも生じたりする。
  • 知的障害の子が家にいる状況は、経験したことがない人には想像しづらい。そのため、知的障害のある家族は他の人を入れたがらない傾向がある。まず両親の気持ちを楽にしてあげる。それは、友人や地域の意味だと考えられる。
  • 以前は、サービスがなく、全部、家族だった。今はサービスが充実した分、サービス任せの気持ちが強い家族もいて、両極端になっているように感じる。
  • 区の取り組みとして、エリア別にワーカーと呼ばれる相談員がいる。ただし、ワーカーは家族の訴えがないと動けないため、家の中で何が起きているか、外からは見えない。外からアプローチしても、家族が歓迎するとは限らない。
  • ガイドヘルパーなど一緒に出掛けるサービスもあるが、友達と出かけたい声も多い。
  • 付き合っていくと、自分の常識は常識ではないことに気づく
  • 真のつながりになるには、スポットではなく、時間をかけた関係づくりが必要。常識や前提が違うので、何年かたって初めてわかることもある。例えば、パラリンピックに向けて障碍者のスポーツ指導員の養成が急務となっているが、スポット的な関わり方の難しさもある。まず最初は、障碍者の方がいる場にいくことで、慣れてくると、何をしたらいいか、自分がどのようにかかわることができるのかも見えてくるのでは?
  • 今、親御さんが困っているのは、休日の過ごし方。それには、地域の中の居場所をどうつくっていくのかが大切だろう。障害をもった人たちが外に出かけやすい地域とは?
  • 周りが関心を持ってあげる必要がある。関心を寄せることから始めてほしい。見守るだけだと、役立ちたいボランティアからやりがいがないと言われたりするが、見守り、関心を寄せることが第一歩で、そこから何ができるか見つけていってほしい。
  • 役所は家族単位でサポートできない課題がある。障がい者の親が病気になった時に、包括的に家族を支える仕組みはない。

参加者の対話から

  • お互いに正直に話すことが大切だが、一般に人が本音で話せる関係をつくるのには時間がかかるように、障がい者との関係づくりも長い目でみて関係をつくっていく必要がある。
  • 地域の人が障がい者や家族と出会うことから始まるが、最初は施設見学など「見る」ことから始めることも必要。
  • 「仕事で出会う」という出会い方は、仕事を媒介してつながることができる。また、一緒に働いた時に生じる課題を補っていくことで理解を深める良さもある。さらに、障がい者がいることを前提に仕事を組むことは、地域の中で障がい者がいることを前提に行う活動へのヒントも多い。
  • 障がいある子どもも参加するキャンプなどのイベントを通して、お互いに接し方を身につけることが必要。
  • 全てを同じであることを前提にしない方がいいが、区別するとはどういうことか、考える必要がある。
  • 障がい者のサポートのゴールは何か? それは、障がいがあっても、尊厳を保って生きていけるとは?を考えることでもあるだろう。
  • 必要なサポートは何か、教育が必要。それぞれの生きづらさへの支えは、社会全体のテーマであり、整えるべきインフラ。
  • 地域の居場所が増えるには、そこでの見守り方、付き合い方を、自分のできることを自分なりの方法でいいので、自覚する人を増やす必要がある。
  • NPOの人などが接し方やコミュニケーションの経験を伝える機会も増えているし、増やしていくといい。
  • 障がい者や家族(特に兄弟など同世代の人)など当事者が、家や施設だけでなく、外で語り、実情を伝えることも必要。
  • 地域の人も障がい者もどう接したらいいか、これからどうしたいか、共に学ぶ場が必要

【今回までの議論全体を通して見えてきた共通の課題】

  • これまでの行政サービスや医療・介護・福祉などのサービスは、専門家を中心に構成されてきた。そのため、「特定の課題」への対応方法は充実しているが、多様性への対応、複合的課題への対応が弱い
  • 特に、家族全体を見る・診る・ケアする仕組みが弱い。また、家族の中で起きている課題の発見が難しい。かつては地域が見守り、発見、ケアの機能を果たしていたが、そこが弱まってきた中で、家族は孤立して存在している。
  • 今、医療、介護の側から生活に領域を広げるアプローチだが、生活側からのアプローチが必要。