あらかわヘルシータウン・クリエイティ部 第6回(2016年1月11日)前半レポート

いよいよ最終回となりました。1/11は祝日のため、午前中は、フィールドワークとして、荒川区の尾久地区から町屋地区のまちあるきを実施しました。下町の尾久の雰囲気、地域包括ケアセンター、医療機関の様子、荒川の災害対策など、実際に街でチェックすると、これまでの議論が一層イメージ豊かに描けるようになります。
また、午後の前半は、健康リスクとしての防災をテーマに、私たちはどう準備する必要があるか考えました。

#6 災害から考えるヘルシータウン

災害から考える地域リスクマネジメント ~東京の水害を中心に~

健康リスクは病気だけでなく、災害も大きなリスクとなる。また、災害分野はリスク・マネジメントの経験が蓄積されている分野でもある。災害と健康、リスク・マネジメントについて、『首都水没』(文春新書)の著作もある土屋信行さん(えどがわ環境財団理事長)にお話を伺い、課題を考えた。

  • 東京の災害というと地震、火災を思い浮かべるが、水害も大きなリスクになっている。ゲリラ豪雨、内水氾濫、外水氾濫、高潮など水害には色々あり、上流の雨が下流に影響を与えるなど複雑な要素が絡んでくる。東京に住む人も水害に関心をもってもらいたい。
  • 東日本大震災の被災地で、住民負担を減らすため、防災訓練を高台の避難所の代わりに近隣のコミュニティセンターで行っていた結果、津波の時にコミュニティセンターに高齢者が集まり、悲劇が起きた事例があった。担当者は防災訓練の度に、「本当に地震が来た時は高台に行くように」と話していたが、緊急時は体が覚えている通りにしか動かない。本番を仮定してする訓練は意味がない。訓練は本番通りに行うことが大切。
  • 災害時には「リスク判断」が大きな影響を与える。緊急時ほど感情的に動いてしまうが、「本当に今、必要なことは何か?」「リスクを過大、過小にみていないか」「科学的に判断することができているか?」を問い続けることが必要で、これは日常から考え方の訓練が必要なこと。災害時には中学生は災害対策要員として必要で、「守られる側」ではない。中学生になったら判断力を磨いておく必要がある。
  • 災害時の健康管理については、避難民の健康への関心は高いが、自衛官、警察、医療、NPOの健康管理が忘れられやすい。心身の負荷が大きい存在を忘れてはいけない。
  • 避難所の健康管理では衛生管理が重要だが、避難している人自身が行うことが大切だと考えている。NPOなどが負担をカヴァーしすぎても、日常感覚を失ってしまう。
  • 夕張市は財政破綻し、医療崩壊した結果、三大疾病の死亡率低下、医療費低下となった。一病息災というが、地域のリスクの大きさを認識すると、住民のリスク管理も、コミュニティの対応力も高まる可能性が高い。
  • 日頃の準備としてできることがある。これを家族で確認してほしい。
    ・各自治体でハザードマップが作成されているので、自分の家の水位など確認しておくことが大切 (アプリ「標高わかーる」)
    ・住む地域と働いている地域が違う人が多いので、それぞれの災害時の対応法を確認しておく
    ・災害時、一番心配になるのは家族の状況。しかし、不安に駆られて帰宅すると二次災害になりうる。家族の安否確認の連絡方法を確認しておく。

参考図書

土屋さんの著書は、水害リスクについて現場経験からの貴重な報告です。