「6種類の資本」 これからのビジネスの“元手”となるものは何か ~2025年のリーダーのための新常識  第8回

資本主義の「資本」とは何なのか、改めて問われるようになっています。
資本というと、お金を最初に思い起こします。
マルクスは資本論において、モノとモノを交換する道具であった貨幣が、お金を使ってモノをつくり販売してお金を増やすように使われた時、資本になったと述べています。それを簡易に描くと、貨幣は「 モノ-  金 - モノ 」、資本は「金 - モノ - 金」となります。お金を増やすために使われるお金が資本という訳です。
事業を始めるには”元手”が必要となり、元手を維持し、増やすことが事業の目的です。
では、元手はお金だけでいいのか?というと、そうではありません。長らく事業には「ヒト、モノ、カネ」が必要だと言われてきました。ここで、ヒトは労働力、モノは資源や工場などのことでした。そうすると、カネがあることで質の高いヒトやモノを集めることができるとされ、「カネ」が最も重要な指針となりました。そこから大きく、良い会社とは、資本金の大きい会社のことを言うようになりました。
しかし、それが大きく変化していきています。
資本金が大きい会社、売上や最高益を出した会社が、2,3年後には転落し、経営危機を迎えるような状況が生じています。資本金や売上も大切ですが、それだけでは良い会社なのか、中長期的に成長する会社なのか、判断が付きにくくなっています。
そこで、組織がどのように長期にわたり価値を創造するかを説明できる必要性が高まり、財務情報だけでなく、非財務情報も併せた「統合報告」を公表する動きが広がっています。
この統合報告では、資本を「組織が価値を生み出す源泉」であり、かつ「価値の蓄積」としています。そして、組織が長期にわたり創造する価値は、資本が増加、減少、又は変換された形で現れると考えています。
例えば、組織が価値を生み出すには、自然の資源を利用する必要があるとします。自社が利用できる自然資源を使い、利益が出たというのは、自然資本が財務資本に転換されたと考えるのです。そうすると、自然資本に対する取り組みがない場合、長期的に見ると自然資本は失われ、それを使った利益を生み出せなくなり、結果的に財務資本も失われてしまうでしょう。
例えば、人材もそうです。財務資本の拡大のみを考え、従業員への研修をしなかったり、過酷な労働が続くと、アイデアを出す人が減り、長期間働く人も減ってくると、人的資本や知的資本が損なわれ、やがて、それは財務資本に影響を与えるでしょう。
世界が日々変化している中で、企業にイノベーションが求められる時代であり、自然環境破壊が深刻になっていく時代には、短期的な利益を追求することで、人や知恵、自然、関係性などを損なってしまうと、長期的に財務的な利益も生まれなくなる。そのことを概念や問題意識としてだけなく、企業がしっかりとガバナンスとマネジメントに組み込むことの大切さを指摘しているのです。
そこで、国際統合報告フレームワークでは「6種類の資本」をあげています。
財務資本 :株式、借入、寄付など
製造資本 :建物、設備など
知的資本 :組織的な、知識ベースの無形資産
  知的財産権、暗黙知、システム、手順及びプロトコルなどの「組織資本」
人的資本 :人々の能力、経験及びイノベーションへの意欲
  組織ガバナンス・フレームワーク、リスク管理アプローチ及び倫理的価値への同調と支持
  戦略を理解・開発し・実践する能力、社員のロイヤリティや意欲、
社会・関係資本 :多様なステークホルダーとの関係、情報を共有する能力
  共有された規範、共通の価値や行動、主要なステークホルダーとの関係性、
  外部のステークホルダーとともに構築し、保持に努める信頼及び対話の意思、
  ブランドや評判に関連する無形資産、組織が事業を営むことの社会的許諾
自然資本 :組織の過去、現在、将来の成功の基礎となる物・サービスを提供する
  全ての再生可能及び再生不可能な環境資源及びプロセス
  空気、水、土地、鉱物及び森林、生物多様性、生態系の健全性
この6種類がどのように増減し、相互に影響しあっているのか、企業は把握し、外部とコミュニケーションしていく必要があるとしています
この6種類がどのように増減し、相互に影響しあっているのか、企業は把握し、外部とコミュニケーションしていく必要があるとしています。
人材開発や働きやすさ、自然保護なども、「社会的責任を果たさないといけない」という消極的な意味ではなく、「自社が中長期的に存続し、発展していくための戦略」として問われるようになっています。
これからますます先が見えにくくなる中で、スタークホルダーからの長期的な信頼を得るために、2020年代に向かって6種類の資本のガバナンスが、とても大切な経営テーマとなっていくでしょう。
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